可愛い部下の「お願い」に儂が勝てるはずがなかったと言う、それが答えじゃ。バレた。
砕蜂に「どうしてもダメですか」「夜一様が書いてくださったものではないですか」と真っ直ぐ言われたら、……多少は良心も痛む。もとい、こう……、なんじゃ。庇護欲と言えば良いのか。甘やかしたくなる、が適切かもしれんし、それ以上に、愛おしさと言う言葉が相応しいのかもしれんが、とかく、砕蜂が散々時間を割いておねだりをしたことで、儂の日記は早々にバレることになった。──余談じゃが、それはそれとして儂の日記があるのではと探しておったらしいの。まァ、……喜んでおったし、それで良しとしておこう。夜一様が私のためだけに綴ったものを、よりにもよって私が読むことができないというのは……あまりにも悲しかったので……それにしても許すまじ浦原喜助、よりにもよってここに繋がる穿界門のみ、私が通れないようにしておくとは……!
>>
紐なしバンジー……?トゲナシトゲアリトゲトゲ……?トゲアリトゲナシ……?紐なしバンジー、別名、自由落下……!
>>
積み重ねていくことと、根本からひっくり返すことの、一体どちらにより意味があり、より畏ろしさがあり、より価値があるのかと時々考える。前者には信頼があり、後者には衝撃がある。人を根本から作り変え、人を根本から揺らし、それが当たり前のことで、それが日常となり、万事一切を傾けるには、どうするのが良いんじゃろうな、と。いずれにせよ、一つずつ出来ることを重ねていくしかないと言うのが結論でしかないんじゃが──悩むより動け、動いたならば結果を出せ。そこに尽きる。破壊とは創造の始まりだと耳にしたことがあります。……今までの私が壊されることは今の私が新しく積み上げられることと表裏一体。ただ価値というならば、それが夜一様の手によって行われる、その一点のみが私にとってはかけがえなく。
>>
睡眠を、改善!?──この、儂の!?夜一様。……夜一様が、野生を忘れた猫のように……ぐっすり……夜一様……!
>>
ついに喜助に呆れられる時が来た。あのニヤケ面に靴でも投げつけておくんじゃった。阿呆が。な〜にが「もうお終いっすね」じゃ。お終いなのは儂が一番に理解しておるわ。砕蜂と再会をした時から、ずっと。
……向き合うと決めた時に、腹は括った。覚悟は決めた。……ま、喜助にはこれまで散々心配と迷惑をかけたからの。喜助も喜助で、これまで儂の面倒を見られて光栄じゃったと涙を流して喜んでいるじゃろうが──そろそろ、落ち着くところを見せても良いかもしれん。夜一様、あのような者に靴をお与えになってはいけません!大前田の靴で十分です。