睡眠改善のため、と称し布団を洗濯した。儂ではなく、喜助が。
>>
想定外の出来事をいかに愉しむかが肝じゃろう。何が起きようと儂の生涯を揺らすものではなく、何が起ころうと儂の永い生を終えるものではなく、如何なる困難も痛快なものであると、そう思うことが肝要じゃと、──ああ、いや、小難しい話をしたい訳ではなく。数ある想定外のうち、良いものと悪いものに振り分ければ、思い付くものの大半は「悪いもの」であることが多い。なにせ、想定外じゃからな。
想定外といえば──大抵なものが、良いものへばかり意識を巡らせ、皮算用で算盤をたたく。中には壊れる間際まで石橋を叩き続ける者もおるようじゃが、実際にその中で起こりうる不幸といえば一割にも満たぬ。真の不幸や災難と言うものは、往々にして、全く予期せぬもので、想定すらせず、目線すら向けたことのない位置から突如として降りかかるものじゃ。じゃから、その心配は天が落ちるような、それこそ杞憂……おっと。全く、話がすぐに逸れる。前置きが悪くなるのは儂の悪い癖じゃな。閑話休題。砕蜂が齎す想定外については。……本当に、どれもこれもが堪らなく心地良い。愉しむ方法に頭を悩ませる必要すらなく、接した途端に口元が緩むようなものばかりじゃ。なにがどう、と言うことに関しては、……儂のものじゃからな。詳らかにする気はないが。とかく、……その、想定外にどう仕返しをしてやるべきかと、それについて今は頭を悩ませておる。……笑えるほどに、幸せな悩みじゃの。
>>
バレたのじゃから好きにして良いと伝え、ついでに砕蜂のための枠組みを誂えた。
>>
光芒一閃、とは今のことを指すんじゃろうな。なにがどうあったか──については伏せたいことばかりじゃから、伏せるが。……ま、儂がこうして言葉に窮すと言うことは、即ちすべて砕蜂が起因しておることじゃ。……さて、困ったの。いかにあやつが愛らしいかを言葉にしたい気持ちはあるが、日頃砕蜂がどのように振舞っているかを考えると、はっきりと言葉にするのは些か気が引ける。
敢えて口にするならば。……そうじゃな、砕蜂がひとつ何かを語り、ひとつ何かを溢すたび、儂の腹が決まる。腹が決まるという言葉では語弊があるやもしれんが、いや……何を選ぶしても、背後に陣を敷かれるじゃとか、活を探すため四方を見渡すじゃとか、そのような言葉ばかりが思い浮かぶ。咄嗟に思い浮かんだものではあるが、存外、的を得ていたかもしれん。
……全く、ここまで追い詰められるとはの。百年、前線から退き根を張らずに生きたツケじゃな……。情けない。じゃが、それもまた良い。それが砕蜂が齎したものであるなら、それすら甘んじて受け入れよう。予期せぬ出来事ばかりじゃが、それを不運じゃ、不幸じゃと嘆く気はない。百年、──百年待たせた。ならば、儂もそれに足るものを見せるべきなんじゃろう。