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┗666.オレンジの庭(36-40/118)

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40 :山姥切国広
2023/07/21(金) 04:40



Luna

任務で疲れていたはずなのに睡魔に嫌われた。
元から眠るのは得意ではないが、最近はわりとすんなり寝付けていたんだがな。自室の外で遠くに響く鳥の鳴き声を聴きながら、抱き締められる腕の中でぼんやりと寝顔を見つめている。


眠るのは得意ではない。
だから夜戦中心にずっと任務についていたし、本丸創設時は、非番の夜は殆ど不寝番の誰かしらと言葉を交わすことも多かった。
伽羅が顕現して、同室になって、色々とあって。
恋仲ではなくとも、眠るのが下手らしいと知った伽羅は、俺と真逆の性質の癖に、眠いながらも起きて、ぼんやりと過ごす俺に付き合うようになった。早く寝ろと言いながら結局限界まで付き合って、返事がないと隣の布団を見ると、大抵伽羅が寝落ちている。
不器用ながら、優しい奴だ。


「おやすみ、が、嫌いだ」と口にした時。
少し驚かれたのか、瞬きをして此方を見ていたあの日のことを時々思い出す。
「俺が口にするのも駄目なのか」と、不思議そうに訊ねられた時、むしろあんたに言われるのが一番嫌なんだ、とは、言えなかった。
ずっとずっとむかしから、「おやすみ」はきらいだった。
『これでお終い』と、幕を下ろされる気になってしまうから。
終いになったら、もう縋ってはいけないのだと思ってしまうから。


今は、たとえ伽羅が眠ってしまっても、ぱたりと声が途絶えて寝息だけになってしまっても、『終い』を感じて、恐れることはなくなった。
むしろ遠慮なく頬を叩いて起きろと喚いて、眠くて目を擦りながら唸る寝起きの伽羅相手に、俺が眠れないから寝かしつけろだなどと大変ごうまんちきくにひろを披露するまでになっている。再三「寂しくなったら叩き起こせ」と口を酸っぱく言い付けられて躾られた結果である。

今日それをしなかったのは、こうして惚気の一端を書いて自分が御機嫌になりたかったからだ。眠れない夜も、たまには楽しくなったのだと、あんたに教えてやるために。


◆◇



だがさすがにそろそろ寝たい。
俺の毛布の声で寝かしつけられたい。起きろ、ぺちぺち。


……こんなに愛らしい叩き起こしや、愛おしい惚気から、……一時間寝過ごす不手際。
……酷く悔しい。
……瞼がいる……。

……あんた、……今日は、ゆっくり過ごせよ。



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39 :山姥切国広
2023/07/19(水) 16:52



Luna

第二部隊で前線に復帰するようになってから全く記していなかった。危ない。夜戦部隊と並行して任務に出ていると目が回ってくる。


伽羅といるようになって、明日でおそらく一年と五ヶ月ほどになる……んだが、それなりに共にいるのに、伽羅から貰うものが日に日に大きくなってしかも隙間なく与えようとしてくる。俺は受け取るのが下手だから、結構な頻度で待てをするんだが、それが伽羅にとって淋しさを感じるものになっていないか心配だ。心配しても待ては掛けるんだが。

本丸ではそこまで話さないくせに俺の前だと圧倒的に口数が多くなるし、与えたがりだしストレートに好意を伝えてくるし、頻度も凄まじい。必然的に口を閉じさせたくなるのはもうなんというか、仕方ないと思ってほしい。布に籠らないだけマシだ。俺は確かに傑作だがどうせ写しなんだからあんたみたいな真っ直ぐで優しい好意に釣り合わない。
────というのは建前で…………、…………恥ずかしいから本当にある程度抑えてくれ。顔が熱くなる。
腹いっぱいだ。俺は大食漢個体じゃない。好きなものをゆっくり食べていたい性質なんだ。
…………せめてじっくり味合わせてくれ。


◆◇



昔の伽羅と変わったな、と思っていたが、そうでもない気がしてきた。伽羅は元からこういう個体だったかもしれない。あまり滲ませなかっただけで、触れたがりだったし口数は多かった。

変わったのは俺の方なんだろうな。
少しも自信がなくて、少しも信用出来なくて、不安症の怯え症だった。
昔は伽羅からの好意も与えられる優しさも、全部俺を安心させるために無理して伝えているものだろう、俺が怯えるから俺に合わせているだけだろう、とずっと思っていた。本当に好かれている自信なんてなかった。


今なんかどうだ。あんたのお陰で俺は随分変わってしまったぞ。
そんなに沢山連ねなくても、あんたが俺を好きで好きで仕方ないことなんて全部知っている。
ごうまんちきくにひろと呼んでくれ。腹いっぱいだ。
ぶくぶくだぞ。どうするんだ。
責任を取って傍にいるんだな。

でも加減はするように。ぶくぶくのぶくぶくになるので。


……ごうまんちきくにひろも、ぶくぶくぶくぶくしているあんたも、……俺は大好きだ。
俺がいやなんだ!!!でも俺もあんたが好きだ!!!!!!



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38 :大倶利伽羅
2023/07/15(土) 22:22



Stella
……もうすぐ、あんたが戻ってくる。
……一報があってから、ずっとそわついている、と言ったら、……。
……軽く呆れられそうだな。


日中、ぽつぽつと、……言葉を交わしながら。
……あんたが休んでいる、その合間合間に、過去の遣り取りやら、前の一冊やらを、……重ねながら、振り返っていた。

今も、以前も、……己の未熟さや至らなさ、睡魔への耐性の無さは、課題でしかないものだが。
……あんたに対しては、常々紡ぐよう、
……日々、想いが募っていく。


……あぁ、愛しい、と。


……今日は、今と、過去と。
あんたの、想いや言葉に、多くと触れた。
……嬉しい、し、……楽しい。
……俺のしあわせの一つだ。


……あんたにも、……触れている。


……これまでも、
……これからも。


……あんたはずっと、……俺のだ。


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37 :大倶利伽羅
2023/07/09(日) 19:00



Stella
……俺は、触れたがりで、口下手な亜種だ。


今更ながらの解釈違い等も含め、閲覧注意

……俺は、他の大倶利伽羅と違って、
撫でたがるし、触れたがりで、……口数も多い。
多くと慣れ合うつもりはないが、
そういった、己が亜種であるという自覚はある。
……睡眠に関して難有りなところと、
食い意地については、……一旦保留しておく。

……。
……恐らく、俺も、……そう、意識して振る舞えば。
……もう少しぐらいは、他の同位体のよう、
大倶利伽羅らしく、
……振る舞う事は、出来ると思っている。

……。……触れ方に関しては、
番うと決めた相手に対して、遠慮をするつもりは更々ないが。
……少なくとも、……紡ぐ言葉に関しては。

……俺の思考は、俺だけのものだ。
元来、他者へ易々と多くをひけらかすものでも、
ましてや意見感情を押し付けるべきものでもない。
そう、……必要以上に、誰かと慣れ合うべきものでもないからな。

その考えのもとに、振る舞えば。
……俺は、恐らくもっと、
大倶利伽羅らしく、
顕現していられるのだろう。

……だが俺は、……少なくとも、あんたに対して、
……そう、在りたくないと思っている。
望まれるなら、……無論、そう在れるよう努める所存ではあるが。

……俺は、……ただでさえ、肝心な言葉が足りない事が多い。
それもあるから、だろうな。
思考総てを曝け出して、
こう考えるから、こう思う、
といった、思考の押し付けをしがちだ。

例えを挙げるなら、
……あんたの事は、嫌いじゃない
……あんたの事は、気に入っている
と、告げるようなところ、
結論である、
……あんたが好きだ、
に辿り着くまでに、長々と理由説明を挿んでしまう。
よく、あんたを、……言葉の波間に沈めてしまう。
悪癖だ、……それは、……わかっている。

……俺の言葉が足りない事で、
……この、向ける想いが伝わらない事で。
……あんたに、……漠然とした不安を、与えたくない。
……深読みや誤解をさせて、傷付けたくない。
…………そう、思ってしまう。
言葉を連ねているからといって、
……それが上手く出来ているとも、……思えないが。
……あんたには、あんたを想う俺がいるから、大丈夫だ、
と、……安心させてやりたい。


……俺は、こういったところにも、……加減と、配慮が必要だ。
……やはり、少しぐらいは、……同位体を、見習わなければな。



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36 :大倶利伽羅
2023/07/01(土) 03:05



Stella
……傍にと、望んでくれて、……ありがとう。

……抱き締めさせてくれて、……ありがとう。

……ねだって、……手を、伸ばしてくれて、
……ありがとう、国広。


……誰が、何と言おうと、
……今日も、……あんたは、沢山頑張った。
……偉い。


……変わらず、あんたが、大好きだ。
…………あんただけを、……愛している。


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