白状
さぷらいず、を仕掛けるんが苦手ちや。
きっと喜んでくれるろう、きっと笑ってくれるろう、そう思うちょるんはわしだけで、あいたぁを困らせたり悲しませる事になるかも知れん…。
そがな思いが未だに捨てきれいでおる。
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…ちゅう訳で早々にこの帳面の事を相談した。
おまんとわしの間にあった事、どがな事を思うたか、感じたか、今まで全部あいたぁに話して、わしらの間だけで完結しちょった事をこがな風に形に残す事をどう思うか?ちゅうての。
流石のあいたぁも突然聞かれてひせったんやないろうか。わしがこがなもんをせこせこ書き留めゆう性質じゃとは思いやせざったろうきのう。
わしは人に比べて出来ゆう事が少ない。わしに出来る事で相手を喜ばせちゃりたいと思うても、そう上手くいかん。
マスターがえい例ちや。
誰でも斬っちゃる!ちわしが言うてもそれを喜んでくれちゅう節は感じられん。ほれに未だに頼まれた事もない。打倒を掲げられる事はあっても命を刈り取る事そのものを望まれた事が無い。
昔、ここへ喚ばれてすぐの頃アサシン連中に一度聞いてみた事がある。暗殺稼業で名を馳せた、殺す事そのものが本分のこのクラスじゃ。マスターが殺しを喜んでくれんと張り合いが無うなってしもうたりせんのじゃろうか?とな。
…ほりゃあ、わしじゃって誰彼構わず殺りとうて刀を握りゆう訳やないけんど、ほれしか出来んわしなんぞ早々に能無し決定なんやないろうか?ち思えて仕方なかったがよ。
……まぁ、夜な夜な酒宴を開いてはカラオケを始めたり一発芸を始めたり、座興には事欠かんその場その場を愉しむ事に特化した様な連中じゃき、わしのこがなぐじぐじした悩みなんぞは一笑に付されて終いやったがの。
結果として。マスターはわしが人を斬らいでも喜んでくれた。一緒に笑うて一緒に泣いて、一緒に怒ってくれゆう御仁じゃった。…ちっくと霊衣を替えるだけでほりゃあ大層褒めてくれゆう。
今日のあいたぁも同じちや。
わしのつまらん不安らぁて吹き飛ばす程喜んでくれちょった。ここを人様にも見て貰える様にするかはまだ決め切れんでおるけんど、あいたぁがこの帳面を開いた時にちくとでも楽しいち思える様なもんだけここへ綴っていけたらえいち思いゆう。