金木犀
この頃になると毎年香りゆう。
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マスターが、女のキャスター連中と一緒にキャッキャしながら金木犀の匂いのしゆう化粧品作りに勤しんじょった。
いつまでも若うて綺麗に居りたいっちゅう気持ちは、洋の東西も古今も問わず女子連中にとっちゃ永遠の課題なんじゃろううな。
……ところでマスター、匂いだけならえいけんど、しょうげにそいたぁらは大丈夫なが?大魔女じゃろう?不死とまでは言わいでも不老のまじないやらおとろしいもんが掛かっちょったりせんがか?
らぁて、こがなお巫山戯を言うた所で、魔女だの何だのと只人連中が勝手に怖れゆうだけでキルケーもメディアも皆々分を弁えちゅう事はマスター見ちょったら嫌でも解る。
しょうげに不死や不老、永遠の美しさらぁてもんが叶うなら、ほれをマスター当人に隠れて施せてしまえるもんじゃったなら、何を於いてもマスターの体に縦横に走る傷痕をあいたぁらが放っておく筈が無い。
とは言えわしらのマスターの頑固さを思えば軽々にしでかしてしまう訳にもいかん。あがぁに若い身空の小娘が、凄惨な傷痕ごと全部何もかもを背負い込む覚悟でおるんじゃき……勝手にあれこれ弄り回して消してしまえる訳がない。
出来るのにせんでおく。
した方がえい筈なんにせんでおく。
誰より本人が望まんのじゃきせんでおく。
そがな辛抱をじっと続けながらああしてマスターの傍で楽しそうに笑い合うて過ごしちゅうんじゃき、まっこと女の肝の据わり具合は天晴至極よな。
わしの様に短絡的な阿呆には到底真似の出来ん御業ぜよ。