ぬくぬくと温かい部屋で飲むキンキンに冷えたビール！
はぁー…堪らんのう。腹一杯に子を抱えちゅうき噛み締めゆう度ぷちぷちした歯触りが堪らんししゃももあるし何杯でもいけゆうちや。
…まぁ冷たいもんっちゅうてもビールと最後に食うたアイス以外は温いもんも仰山食うてしもうたがの。熱々の蒸したて焼売じゃとか！ほくほくのじゃがバタじゃとか！ぐつぐつ煮込んだもつ煮もの！めっそう美味い！！

ほんまは寝る前にちっくと茶漬けでも掻っ込むだけのつもりやったんに、やっぱり美味い飯とあいたぁが隣に居るとあっちゅう間にあれもこれも食いとうなりゆう。腹も膨れて、酒が美味おて、話も弾んだらもう堪らん。こがな稽古ならいつでも大歓迎ぜよ。

撫でられゆうがは好きちや。気持ちがえい。
わしらサーヴァントには霊体化がありゆうき、体を清潔に保つ事を目的とした入浴らぁてこれっぱぁも必要無いけんど、ほれでも熱い風呂に浸かるがは気持ちがえいし、背中を流して貰うたり頭を洗うて貰うがも気持ちえい。わしらが生きちょる頃に無かったドライヤーっちゅう機械もめっそうえいもんじゃち思いゆう。濡れ髪がああも早ように乾かせるらぁて、しょうげにマスターが暮らしゆう時代は便利な世の中になったもんちや。

そのドライヤーであいたぁの髪を乾かしちゃる時間もわしの好きなもんの一つちや。
にこにことやに下がった顔しちゅうじゃろう事が丸解りの声で話しちょった筈が、段々返事も胡乱になってって、途中からはとうとうかくり、かくりと頭が揺れ始めゆう。舟を漕ぎ始めちょるんを合図にドライヤーの風量を落としたり、髪を掻き撫ぜゆう手をそっとさせたりしちょったら、めっそう気持ちよさそうに居眠りを始めゆう時がある。

ドライヤーを掛けちゃる時っちゅうと大抵あいたぁは座っちょる事が多いきに、どればぁ気持ち良さそうに寝ちょっても結局起こしちゃらんとならんのが心苦しい。そのまま寝かせちゃれる様に寝転がった体勢で髪を乾かしちゃれたりせんろうか？

はぁー、まっことだれた。指一本たりと動かしとうないちや。
吹雪かれて吹雪かれて、しょうげに目的地へ向かって近付けちょるんかも解らんままに歩いて来たきのう…。
こがな日は居室の小さい風呂なんぞやのうて、広い広い大浴場にザブンと浸かるがが一番ぜよ！

どうもあいたぁも同じ場所へレイシフトしちょったみたいじゃき、連れ立って風呂へ行く事とする。あいたぁの顔見た瞬間、疲れもちっくと癒えたきに今のわしは気分がえい。特別サービスで背中でも流しちゃるとするかのう。

今居るわしらのカルデアが、“ふぃにすかるであ”ち呼ばれちょった頃からあったっちゅうサンルームがわしは一番気に入っちゅう。
燦々と降り注ぐ疑似太陽の陽光とその温度は常に優しく柔らかく、いつ何時でも小春日和の心地よさを味わえゆう。陽の光もまともに浴びれんままじゃと只人は心身の健康もよう保てんっちゅう理屈で拵えられた設備ち聞いちょったけんど、サーヴァントの身にもお天道さんはありがたいもんにかあらんちや。

いつじゃったか霊基異常でサモエドになってしもうたあいたぁを連れて、ここで日向ぼっことブラッシングをしちゃった事を思い出した。

ぽかぽかとしたお日さんを浴びながら、ふかふかの毛むくじゃらに乗っかられた状態でベンチで横になっちょった。…あの日の午睡はしょうまっこと気持ちえかったにゃあ。

昨日の流れからマスターに抜刀の仕方だけをみっちり仕込む……予定じゃったけど、講習会は早々に解散となってしもうた。

模擬刀とは言えそこそこの重量はあるきのう、おなごの細腕には辛かろう。重さで切っ先がブレゆうんをちくとでも制動しようと鍔元ギリギリを握るきに、手袋しちょっても親指の付け根の皮がざんじ捲れてどうにもならん有り様じゃ。

ほりゃあ無理よな。まずは体から造らんと。

剣術らぁて体で覚えるもんじゃち思うちょる様なわしじゃきに、教え方らぁてひとっちゃ解らん。その辺り柳生の爺さんに聞きに行ってみたけんど、お得意の「我が剣は御留流…」を聞く羽目にもならいで済んだ上に、頼む前から先生枠に収まってくれちょった。
爺さん曰く、剣術を教えるにはその求道心と苛烈さで難儀したっちゅう話じゃけど、今日マスターに仕込むがは剣の扱い方でしかなかったきの。打ち合いにすらならんもんに留流も何も無いじゃろ。
まるで孫子に教えるみたいに手取り足取り…ほりゃあ人のえい好々爺みたいになっちょった。

……わしも、一等始めに剣の握り方から教わったがはお父やんからじゃったのう…。

そうこうしちゅう内にわらわらと、どこから湧いて出て来ゆうんか腕に覚えのある連中が我も我もとマスターに教えに掛かるきに、収集が付かんっちゅうて解散した次第ちや。
一部の奴からはマスターに人斬り包丁持たすなやっちゅう圧がダダ漏れちょったけんど…。何もかもが経験じゃ。知らんよりは一つでも多く知っちゅう方がきっとえい。

わしみたいにならん為にも、知識はきっと立花の身を助けゆう。