避けられてみたい、ち言うたらあいたぁを困らせるじゃろか。
別離の危機…とまではいかんでも、何ぞそういう…。
わしがあいたぁを遠ざけようとしたり、邪険にするんは帝都の頃に散々やっちゅうき、以蔵さん、以蔵さん、っちゅうてわしを見付けたら人懐こうに寄って来ゆうあいたぁからもし…距離を取られ……たら…。
いかん。
やっぱりやめじゃ。こがな事あいたぁに言うてどうしゆう。示し合わせた事じゃち解っちょっても、きっとわしが耐えられん…。
どればぁ土佐に戻んて来いち誘おても、戻ろうとはしてくれざった時でさえこがな気持ちになったりせざったんに…。
あいたぁ元々泣いたり笑おたり表情がクルクル変わる百面相の名人やったがじゃけど…。
あがな顔しゆう時はいかん。
ヘビに睨まれた蛙や無いけんど、目が合おただけで腰が抜けてしまいそうになるちや。
他愛も無く睦み合おちゅう時は煮溶けてしまうんやないろうか？ち思う程緩ませちゅう目が、ちっくと……そう。ほんのちっくとわしが踏み誤ると灼け付く様な情念を宿した彩をしゆう事がある。…その、やらしい事をしゆう時は……特に。
あ、と思おた時にはもう遅い。
手足が竦む程の圧に背筋は寒々と震えゆうんに、あいたぁの燃える様な体に触れとうて触れとうてしょうなくなるがよ。
あの目はいかん。へこいちや。
…けんど、あの維新の英雄にそがな悪い顔させゆうんがわしじゃち思うと……昂って昂って何遍でもそがな目をさせてやりとうなってしまうがじゃ。
まっこと、わしは性の悪い奴じゃのう…。
誰じゃ、注射らぁておとろしいもん考え付いたやつ。
わしらサーヴァントの霊基はどうあっても生身の人とは違うきに、マスターやカルデアのスタッフが受けゆう様な検査とはだいぶ毛色が違おちょる。
大抵はスキャンして終わりのお手軽さで済みゆうけんど、偶ぁに注射で血を抜かれたりするあれは……、あれは何なんじゃろう？
血と変わらん赤さ。温さ。ヌルつき。けんど鉄臭くも無く赤黒うに変色もせん。人の血液とは決定的に違う何か。
鉄の匂いはせんくせに、魔力の匂いはプンプンしゆう。
霊基の格にも依るんじゃろうか？ライダーの時のあいたぁよりも、ランサーの時のあいたぁの方が魔力の匂いは濃いし美味い。三騎士と四騎士の違いか、ほれともレアリティに差があり過ぎゆうんか、馴染みはライダーのあいたぁの時の方がずっとえいんじゃけどの…。
検査自体は益体も無く血じゃとか魔力じゃとかそがな事を考えちゅう間にすっと終わってしもうたけんど、あいたぁの事ぎり考えちょったせいかどうにも口寂しいていかんちや。
腹が減っちゅうんじゃろか？今日は早めに食堂へ向かうとするかの。
特異点を解決して来たマスターが高杉を連れて戻んたきに皆で酒盛り……しちょったがじゃけど、途中からすっかり記憶がわやになっちゅう。
どういてわしがピッカップされちゅうが？
いや、されちょったがは知っちゅうちや。魔王の方のノッブと一緒やなかったがよ？どういてあいたぁが隣に居………………ゥオエ゛……。
…………うぐぅ…、気持ち悪い…。こいたぁ迎え酒でもせん事にはマシにならんのやないろう、か……ウェ。べこ。召喚式回りなや。グルグルすな。ビカビカ光るな。喧しい。……ゔぅ…また吐いてしまいそうぜよ…。
いつぶり…前の時のSAITAMAぶりじゃろか？おまんと並んで召喚に組み込まれゆうらぁて…。くそぉ、涼しそうな顔しよってからに…。こがな状態で召喚ルームに張り付いちょったらしょうげにマズいちや。医務室に詰めちょる先生にでも二日酔いに効くえい薬か何か、処方して貰うちょかんと。
花も綻ぶぽかぽか陽気、と言いたい所じゃけど。
じっとしゆうとじんわり肌寒う感じる事もあるのう。
……へ？たかが気温の変動程度でサーヴァントが寒気を感じる事らぁて無い？ほれは今ゴーストランタン目当てに周回しゆう死霊クエのせいじゃと…？
気色の悪い事吐かすなや！！
……はぁ。魔獣だろうと死霊だろうと、どがなエネミーも斬っちゃるけんど、やっぱり特攻が効いて気持ち良う働ける仕事がえいのう。マスター、適材適所ぜよ。死霊に強いアサシンじゃったらわしやのうてグレイ連れて行っとうせ。