使い古しで構んきに、あいたぁのシャツをくれち言うた事がある。どういてそがな話になったかも…何を思うてわしがそがな事を言うたかも、正直恥ずかし過ぎるき思い出しとうはないけんど…。

そのシャツに続いて香水も、あいたぁの使いかけを是非にと乞うて譲って貰うた。あいたぁは封も開けちょらん方をくれようとしたけんど、そがに頻繁に使うもんでなし残り少のうても用は足りるきこれで十分ちや。

真っ白なサモエドによう似たぬいぐるみ。
あいたぁが着ちょった青いシャツ。
愛用しちゅう香水。

少しずつ、少しずつあいたぁのもんがわしの部屋に増えていく。

まぁ…誕生日じゃとかクリスマスじゃとか、記念じゃからとあれこれ大概色んなもんを貰い受けてはおるけんど、ほれとこれとはまた別ちいうか…。羽織の時に腰に提げちゅうリボルバー同様、あいたぁの物やったもんがわしの手の中にあるのがえい。

この違い…言葉で説明するにはわしには難しい気がするちや。

……っちゅうがに、随分と小慣れたもんよな。
四、五日前からまたぞろ厄介な特異点が発生しちょって前述の通りの有り様なんに、結局の所わしらに出来ゆう事は限られちょってどがぁにもならん。

ちくと前にもマスターやないマスター、藤丸立香やない藤丸立香の存在が取り沙汰されちょったけんど……。
立香と立花みたいな可愛らしいもんやない様な…どうにも悍ましい気配が濃うて足が竦みそうになりゆうがよ。

ちゅうても、ほれがどがな厄ネタじゃろうとマスターの危機じゃっちゅうならどこへでも出張って行くのがわしじゃけど。出来ればどうか、笑い飛ばせゆう様なトンチキさで賑々しゅうに戻んて来て欲しい限りちや。

あいたぁが一人で何でも抱え込んでしまいゆう癖は、昔に比べればほりゃあちくとはマシになったかも知れん。知れん…けんど…、あれもこれもと一遍に手を伸ばして身動き取れん様になる所はSAITAMAで吹っ切れた後から増えた様な気がしゆう。

プラマイ０ちや。

まぁ、ほれでも好きでやりゆう訳でも無いのに次から次へと負っ被せられちょった頃よりかは、自分の興味の赴くまましたい事見たい物とでぎっちり両手をいっぱいにしちゅうあいたぁの方が、わしも見ちょって気持ちがえいき構んのじゃけど。

ちっくと肩を貸して欲しいち言いながら、困り顔で頼られゆうとどういても断れん。可愛いてならんちや。

あいたぁとの関係や今の状態に何の不服もありゃあせん。ほれは天地身命、武市に誓おてそうなんじゃけど、時々ふっと思う事がある。

あいたぁと初めて会うた時も、サポートで呼ばれ合う度挨拶程度に言葉を交わしちょった時も、カルデアの枠を越えて行き来する様になってからも、生きちょった頃みたいな関係にしかならんもんじゃと思うちょった。同郷同士の古馴染み、酒飲み友達、稽古仲間、そがな様な…。

まさか肌を合わせる仲になるとは、しょうまっこと思うちょらざったがよ。

何の気紛れか、巡り合わせか、勿論あいたぁが誠心誠意言葉を尽くしてわしと向き合うてくれたきそうなれたんじゃち思うけんど、卑屈で捻くれ者のこのわしがコケにされちょるとも侮られちょるとも思わんで、すんなりと請け合うたがはどういてじゃろう？

とうに絆されちょったのか、そもそも生きちょる頃から想いを寄せちょったんにわしが自分で気付いちょらんかったのか…。

いずれにせよ妙な受け取り方をして、怒って、殴って、拒絶して、折角繋がったわしらの縁を拗らせきってしまわんで済んだがはまっことえかったち思いゆう。

そがなもんに耽りゆうらぁて黒髭か刑部姫位のもんかち思うちょったら、鹿爪らしい顔ぎりしちゅうエルメロイ二世にイスカンダル、巴御前まで加わって、水着ではっちゃけたジャンヌ・オルタにガネーシャやらゆう神さんまで首ったけになりゆう。

そがぁに面白いかち問うたらば、わしの好きな博打も似た様なもんじゃと誰かが言うちょったきに…無理も無いか知れんちや。

そがなゲェムをわしも時々しゆう事がある。勝ち負けのあるもんじゃと無駄に熱うなってしまいゆうき、こつこつと畑を耕したり家畜の世話をしてみたり…暮らし易い様に町を整えていくだけのもんじゃけど、これがなかなか面白い。確かに夢中になってしまう気持ちも解るちや。

あいたぁはこがなん興味があるじゃろか？牧場や畑で取れたもんで商売しゆう事でもあったら、あいたぁの知恵でも借りてみゆうかの。