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　規則正しい呼吸音。不恰好ないびきをかくこともなく、重ねたブランケットの膨らみを静かに上下させて息をする、眠れる獅子。猛々しい獣王のたてがみを彷彿とさせる三つ編みは今は解かれてゆるやかに波打ち、若草色のシーツにその毛先を広げている。柔らかで、艶やかな長い髪を指先で軽く梳くように撫でるのが好き。起こさないように、毛先に向けてゆるりゆるりと。頭上の獣耳が時々ぱたぱたと翻り、再び伏せられる様がとても可愛くて、流石『キュートなお耳』の自覚があるだけあるわよね、と独りごちて笑う。

　アンタと話したこと、行った場所、見た物。そういったものをフォトフレームに数秒過ぎる写真の数々や、随分と分厚くなった日記帳の１ページ１ページで思い返す。随分昔のことのような、つい最近のことのような、相反する感想を同時に抱いて捲る日記帳の、殆ど全てのページに篭るアンタへの愛情。アンタが好きよ、と伝えるためだけに取られた幾つものページ。もう少しで三年になるっていうのに、アタシ、昔から変わらないわね。

　でも……そうね、ボタン付けは昔よりも早くなったと思うわ。誰かさんが、何度言っても雑に服を脱ぐものだから。けれど、アンタに告げる出来上がりの時間は以前と変わらないかもしれない。だって、アンタと過ごす時間は長ければ長いほど良いに決まっているもの。


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　日記を書きかけたまま寝てしまっていた。内容が消えてなくてよかったわ……アンタもしっかり休んでいるみたいだしアタシももう一眠りしましょう。レオナ、今日も大好きだったわ。

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　最近、アンタがアタシを健気だなんだと妙に持て囃すものだから、可愛い可愛いと愛でられた時と同じくらいに擽ったくてむずむずしてしまう。というかアタシが健気って……もしエペルが耳にしたら、大きな目を零れ落ちそうなくらいに見開きながら「はあ！？」なんて品のない声を上げて、アンタの熱を疑うこと間違いなし。もしくは、呼吸困難に陥るほどバカ笑いをするかのどちらか。

　別に、自分を健気だとは思わないわ。何もかも、アタシのやりたいようにやっているだけよ。……それでアンタに可愛いって言われるのは、そうね、……いやではないけど、……ちょっと恥ずかしい。ちょっとだけ。嬉しくないとは言ってないわよ？


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　一人の時間にも少しずつ慣れてきて、思っていたよりも落ち込まずに毎日を過ごせている。もちろんアンタは足りてないし、中々顔が見られないのは寂しいし、もっと話したい気持ちはあるけれど、以前感じていたような……強迫観念というか、焦燥感のようなものはあまり感じなくなった気がする。それは多分、アンタがしてくれた約束のおかげね。待っていれば必ず、アンタが帰ってきてくれるって安心感が、アタシの御守りになっている。アンタの言葉がアタシを支えてくれているの。それは、これに限ったことでもないけれど。

　アンタの、アタシに対する負い目や引け目が少しでもなくなってくれたらと思う。だって、アタシはアタシの勝手でアンタを待ってるのよ。アンタが好きだから、アンタの側に居たいから、アタシが待ちたいからアンタを待っているだけなのよ。アンタが申し訳なく思う必要なんてこれっぽっちもないわ。

　…………でも正直、アンタに「待ってろ」って言われたらそれはそれで大喜びでしょうね。アンタなら、アタシが見えない尻尾をぶんぶんと横に振って、分かったと頷く姿が容易に想像できるでしょう？　自分で言うのもアレだけど……アタシって本当に、アンタのことが大好きよね。フフ。

believe in love

>> 34ヶ月記念。

　アタシはアタシ自身の愛を信じているし、なによりもアンタを信じている。会えない時間を寂しいと思うことはあるけれど、それを不幸だとか幸せじゃないだとか、そう思うことは一度もない。だから、そんな心配は要らないわ。会えなくて悄気たり寂しがったりするのは当然だって、アンタが言ってくれたのよ。
　でも……そうね、これから先長くアンタと過ごすために、悄気てばかりいられないのも事実。まずはこの環境に慣れて、いつでも帰ってきたアンタを笑顔で迎えられるように、笑顔で送り出せるように心掛けるわ。

　前にアンタ言ったでしょ、余裕がない時はアタシに寂しい思いをさせるかもしれないけど許して欲しいって。アタシ、ちゃんと許せているかしら。寂しいことは伝えるけれど、アンタを責めるんじゃなくて優しく許容して、いい子で待てているかしら。……アンタに時間が出来たら褒めて欲しいわ、それを糧にしたらもっと頑張れる気がするのよ。


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　まだ落ち着かなくて慌ただしくしているアンタが、その手隙にアタシの様子をわざわざ見に来てくれた。その顔を見て、ああ好き、アンタが好きって、ただそれだけを思ったの。小難しいことなんて何もなくて、本当にただアンタが心から好きなのよ。理由を挙げるのはいくらでもできるけど、そうじゃなくて……ただ、ただ本当に大好きなだけ。

　アンタがアタシの恋人でいてくれて嬉しい。側にいられて嬉しい。毎日アタシのところに帰ってきてくれるのが嬉しい。今日を二人で迎えられたのが嬉しい。アンタを好きだって、愛しているって毎日実感しているわ。その度にアンタにも伝えるから、アンタもいつでもアタシの愛を信じていて。

100

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　100ページ。アタシもなにかレオナと一緒に、って思っていたけど……暫くは忙しいみたいだし、とりあえず場所を取るだけ取って空いてる時間に埋めることにしましょう。何を書こうかしら……？　アンタが喜んでくれるならなんだっていいんだけど。

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　取ってから記念日が明日に迫っていることに気付いて、折角なら明日取ればよかったと後悔。後先を考えない行動はだめね、は〜……。

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　今日と明日は忙しいって言っていたし、折角だから部屋の掃除でもしようかしら。特別な大掃除が必要ない程度にはいつも綺麗に片付けてはいるけれど、細かいところを念入りにって機会は中々とれていなかったのよね。疲れたアンタがアタシの所へ戻ってきた時に気持ちよく過ごせるように、きっちり美しくしておきましょう。


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　花瓶の花を入れ替えて、ふと思ったの。アンタが好きな花ってなにかしら。アンタが花を愛でる姿はピンと来ないけど、それでもそれなりに目にした瞬間に「おっ」って思うような花くらいはあるでしょ？　……もう少しでピオニーの出回る時期ね、試しに飾ってみようかしら。


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　アンタが今までアタシにしてきてくれたことを、今のアタシがアンタに返すのよ。アンタが無理していないならそれでいいの、帰ってきたらゆっくりシャワーを浴びて休みなさい。今日もお疲れ様、一緒に過ごしてくれてありがとう。