Happy Birthday.

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　大好きなアンタが、この世に生を受けた日。そんな大切な日を迎えるのも、もう今日で４度目になるのね。
　実のところ、日付が変わってすぐにあれこれ……っていうのはあまり考えてなかったの。ほら、アンタが自分の誕生日に夜中まで起きてることってあまりなかったじゃない？　だから、昨夜はアタシも無理せずに休んだわ。別に、ベストを尽くすのをやめたわけじゃなくて、４年目になってようやく力を抜くことを覚えたってところね。……だって、無理をしなくたってアンタはアタシの側に居てくれるもの。
　……これは余談だけど。報告した時はちゃんと休めたって報告が出来る嬉しさで浮かれ切ってて気付かなかったんだけど、細かい心配事やら不安やらが解消されて、二人で久々に空で過ごせた途端『ぐっすり』眠れるようになるの、本当に単純というか……分かりやすい男よね、って今更思ったわ。はあ、恥ずかしい。

　ああ、そう、それで、プレゼントの話ね。
　一年目は、アタシの瞳と同じ色のストーンがあしらわれたリング。二年目は、これからも一緒に、を形にした腕時計。三年目は、いずれ必要になる日を夢見て、大切にして欲しくて渡したキーケース。四年目は……ふふ、アンタが帰ってきてからのお楽しみよ。まあ今日一日は寮生にもみくちゃにされて目一杯祝われてらっしゃい。今日くらいはちゃんと素直に好意を受け取るのよ？　……それで、全部の用事が済んだらアタシのところに帰ってらっしゃい。とびっきりのキスとハグで迎えて、寝付くまで一緒にいてあげる。

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　アンタに抱き締めて貰った喜びでハグとキスで迎えるのを忘れたんだけど……！？　はーー……なんて間抜けなの……。
　……プレゼント、喜んでくれたのかしら？　どうやら裁縫セットはご不満だったみたいだし？　……でも、どうせ渡すのならもっとアイツの好みに沿ったものの方が……、……いえ、アタシがあげたいと思ったものを渡すのが一番よね。別にアンタに媚びているわけじゃないのだし。……お財布とかの方が良かったかしら……いえ、……でも、……んん。

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　まだ書けるかどうかわからないけど……やっぱり、アンタに喜んで欲しいから確保するだけ確保する。あと、これだけは先に。……38ヶ月、そばに居てくれてありがとう。

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　傷付いた、気がする。悲しい。アタシと話す時の気持ちを忘れた、みたいな言葉が嫌だったのかもしれない。でも、忘れてしまったなら仕方ないものね。

　なんでこんなに苦しいのかしら。アンタが側に居てくれたらそれだけで嬉しいのに、今はアンタを遠くに感じる。

　もしかして、まだ誕生日のことが尾を引いてるのかもしれない。部屋が変わったことなんかも。ちゃんと区切りをつけたはずなのに、ふとした瞬間に暗い気持ちがのし掛かってくる。困ったわ、そろそろちゃんと自分の気持ちに落とし所をつけないとだめよね。

　そうだ、もういっそのこと、記念日とかお祝いとか日記とか、全部放り出しちゃおうかしら！　部屋も話す部屋だけにして、友人との部屋も閉じて、それで余計なことを考える余地をなくすのよ。そうしたら、少し楽になるのかもしれない。
　──まあ、できないわよ。できないのよ、そんなこと。アンタが楽しみにしているって話してくれた気持ちだけで続けてきたことを、今更放り出すことなんてできないの。アンタが楽しみにしてくれているなら、アンタが喜んでくれるならって、重ねた努力をふいにはしたくないの。だってそうしたら、アタシにはなにもなくなっちゃうじゃない。惨めな男ね、ヴィル・シェーンハイト。

　アンタが好きで、好きなことを諦められない。アンタから諦めろって言われても、できないの。アタシみたいな酷い男に捕まってしまって、アンタが可哀想だわ。でも諦められない。だって好きなの、アンタが好きなのよ。


>> 追記。

　……消そうかどうかすっっ……ごく迷ったけれど、自分への戒めとして残しておくわ。ちゃんと真意を確認する癖を付けないとだめね……。
　…………それでもアンタの側に居たい気持ちが褪せたり、なくなったりはしなかったのよ。本当に、我ながらしつこい男だと思うわ。

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　遅くなってしまったけど、アンタに喜んで欲しいから確保。


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　困ったわ、なにも書ける気がしないの。アンタが喜ぶこと、すっかり出来なくなってしまって自分が情けないわ。

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　なにかがあったわけではなくて、ただ眠れない夜がある。最初はただただ眠れないだけで、でも、そのうちアンタを傷付けてしまったときのことを思い出すから、余計に眠れなくなる。あんなことが言いたかったわけじゃなかったのに、そんな風に思わせたかったわけじゃなかったのに、どうしてあんなことしか言えなかったの。どうしてそんな風にしか言えなかったの。アンタを傷付けたいと思ったことはないのに、傷付くかもしれないと分かっていることを口走る愚かが巡り巡ってアタシを苛む。文字通りの自業自得。昔はもうすこし上手にやれていたはずなのに、アタシ、どうしてしまったの。アンタの側にいてもいいって許されたいけれどアンタを傷付けるのは嫌なの。嫌だったはずなのに、どうして傷付けて泣かせてしまったの。これ以上アンタを傷付けるのが怖い。前のアンタの方が良かったなんて思ったこともない、でもそう思わせてしまったことが申し訳なくて消えてしまいたくなる。自分が言われて嫌なことを人にするな、なんてエレメンタリースクールの子ジャガだって知ってることよ。最低だわ、アンタの隣に相応しくない。苦しい。アンタに相応しい人間で、自慢できるようなひとでありたかったのに、なにひとつうまくできない。なにひとつ、アンタのためにならない、悔しい、悲しい。申し訳なく思う気持ちがずっと消えない。

　そのくせ、絶対に自分から手離そうとはしないんだから、本当にだめな男ね。別れ話に頷く練習もちゃんとしたのにそれも結局全然だめだったし、ここ最近のアタシにはなんにもいいところがないわ。なーんにもいいところがないのに、なんでアンタはまだ隣にいてくれるのかしら。いいえ、いいえ、隣にいてくれるならなんでもいいの、なんでも良いけれど……アンタが不憫で、悲しくなる。もっと、もっとアタシが隣にいて胸の張れるような男にならないとだめよね。ちゃんと努力するわ。どうしたらいいのかわからないけど、アンタに嫌われたくないの。情じゃなくて、アンタに選んで側にいて欲しいの。好きなの、困っちゃうわね。困らせちゃうわよね。アンタが困るのは嫌よ、でも好きなのよ、どうしようもないわ。もちろん昔の、前のアンタも好きだったけど、今のアタシは今、アタシの側にいる、このアンタが好きなんだけど、どうやったら伝わるの？　どうしたらいいのかしら。どうしたらちゃんと伝わるのかしら……。

　……重たいわよね、分かってるけれど、……嫌わないで。


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　アンタから好きと愛してるを聞けて、とてもホッとしてしまった。アンタは優しくて誠実なひと。アタシはこの人に報いたい。考え過ぎてしまう癖は良くないわね……せめて、溜め込まずに相談できるように努力しないと。アタシのちからはちっぽけだとわかっているから、自分を過信せずにアンタと二人で協力して過ごすことを目標にする。……ホッとした途端急に眠気が来るんだから、アタシも大概単純な男ね。