>> 31ヶ月記念。 ね、レオナ。唐突だけど、下からどれか一つを選んでちょうだい。
黒地に所々金箔が輝く、薄く細長い小さめの箱。
(縦方向に捲るように蓋を開くと、赤くやわらかな布製の緩衝材の中央に収まるのは白い軸と金色のペン先が眩しい万年筆。隣に鎮座するキャップには同様に煌めく金色のクリップが備わり、そのクリップの先端には初夏を思わせる鮮やかな色味のグリーンガーネットがさりげなく埋め込まれている。ひらり、開いた蓋から落ちた小さなメッセージカードには、相手にとってひどく見覚えのあるだろう筆跡で『インクの補充を忘れずに』と)
一辺が40センチはあろうかという、赤く目立つ大きな立方体の箱。
(見た目に反して軽い箱の中身は、はらりと落ちる紙切れ一枚)『がっかりした? 残念だけどこれはハズレ──ではないのよね。本当の中身は冷蔵庫の中、つまみ食いしちゃだめよ。』
冷蔵庫へ。
(開く冷蔵庫の扉から流れる冷気に混じって、敏感な嗅覚へと微かに伝わるのは濃厚なカカオの香り。アイレベルに合わせて置かれた透明皿の、さらに上へと被せられた半ドーム状の透明蓋の向こう側。丁度二人で食べ切れる程の大きさの、見た目からそのビターさが伝わるクラシックなチョコレートケーキが、庫内の灯りをその艶やかな表面で反射して煌めいている)
青と金のリボンが結ばれた、平たく白い箱。
(リボンを解いた瞬間一人でに箱が開き、どこか間抜けにも思えるトランペットの音とどこからか湧いた紙吹雪と共にフォトフレームが宙に浮いて相手の手へと渡り、既に登録したデータの中からランダムに相手、または二人の映った写真が一定時間ごとに表示されて。その裏、指先が触れるだろう場所に貼られた付箋には『いいこと、Magizonの「送付オプション:お祝い」は決して選択してはだめよ。こうなるわ。』と走り書きの筆跡で記されている)
選んでくれた? それはウィンターホリデー前の、ちょっとしたプレゼントよ。……久々のサプライズ、成功したかしら。
>> …………ここまで用意したはいいけれど、いくら記念日だからってちょっとはしゃぎ過ぎかしら……? 空回ってたらどうしましょう、あの、レオナ? 喜んでくれた……?
>> とっても喜んでくれたみたいね。……良かった、ふふ。