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78.荼毒の廻瀾による享楽的濁穢について。
 ┗13

13 :治/崎/廻(M/H/A)
2021/12/12(日) 10:52




組長が酷く愛していた時計があった。
オヤジが息を吸って吐く度に秒針が足踏みをする、この世界で一番幸甚たる一生を歩む時計だった。普段オヤジの懐で息衝く割に滅多にお目に出来ない。小さな溢れ者でも、その棟梁が自ら時間をスケジュールする必要はないのは分かりきっている。不要を所持する煩雑さに俺は何度か苦言を呈したが、不要な物を持つこと程贅沢なことはないとオヤジはよく言っていた。

次第に狂っていくセコンドに直したらどうだと伝えても「これでいい」なんて馬鹿げた答えしか返ってこなかった。徐々に歩みが遅くなる絡繰りに、オヤジが向けるあの優渥を強めた目が忘れられない。
組長が病床に伏す今も、その時計は傍らで時を刻む。俺にはもう治せないその秒刻が、オヤジの鼓動そのものに見えた。


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