幸せだった日々の記憶を、ゆっくりと辿っている。過ぎ去ったものを惜しんで、愛おしむことしか出来ないでいる。

最近の千束は忙しい様子で、顔を合わせる機会もすっかり減ってしまいました。リコリコのシフトも被っていませんし、依頼も別々に受領しているので一緒に仕事をすることもないです。それに、千束は私が眠る頃に帰って来ることも増えました。……寂しくない、と言えば嘘になります。現に私のどうしようもない本音が、黙っていようと決めたものが、ぽろぽろと溢れて止まらなくなったのが、つい二日ほど前のことです。遅くまで頑張ってきた千束にぐずぐずと泣きつくのは申し訳ないと思いつつも、千束の言葉のあたたかさに救われて、今の私はそれほど苦しまずに千束の帰りを待っていられます。……ありがとうございます、というのは多忙が落ち着いてから直接伝えた方が良さそうですね。
二人だけの時間が欲しい、……ゆっくり、旅行をするのもいいかもしれません。私たちリコリスは戸籍がないので、国内に限られてしまいますが。千束と一緒なら、どこだっていい。早く千束を独り占めしたい。

⚠︎ 閲覧自己責任

重くなりたくないし、国広に負担を掛けたくない。……今更かもしれないが。国広は「俺が負担と言えば気にすればいい」と言ってくれているから、現状そうではないことは分かっている。そういう思考とは裏腹に不安はどうしてもついてまわるもので、誰が悪いという訳でもなく、俺の良くない癖のひとつというだけ。この癖も、最近は国広のお陰でなりを潜めていたが、個刃的に悪いことが立て続けに起こったこともあって、思考が引き摺られている。……全く、さっさと振り切りたいものだ。

眠る前に会えて良かった。今日も国広のことだけを想っている。