眠気が、睡魔が纏わりついて…、……いや、違うにゃ。泥のように眠りたい、寝ちまいたいのに睡魔は纏わりつくだけで夢の中には誘ってくれる気配がない。

…………何故俺なんかが筆を、と思わないでもないが。今日は俺が、ということらしい。……当番制なのか？いや、そんなことはないはず、…違うよな？いや、とりあえず日記だ、日記。今日あったことといえば……ああ、長谷部が夜戦に出ていたらしく、俺が本丸を出るのと同時に帰ってきて夢の中へ落ちていた。いや、……それ自体に対してなにか思うところがあるというわけではない。断じて違う。……なんというか、どうやら一日中寝てしまっていた、と聞いて。あの刀にもかわいらしい一面があるんだなと思っただけだ。………普段はあれだけ、俺をかわいがっ、〜〜ッ…！……こほん。……あんたはなにも見ていないし聞いていない。いいな？別に俺は、普段はあれだけかわいがってくるくせになんて言葉は一言も口にしていない。（※している）───で、だ。問題なのは、何度か起きてきた長谷部が、今日は寝すぎたと口にしてから一度も顔を見せていないこと……その、俺が言うのもなんだという自覚はあるからなにも言わないで欲しいんだが、寝すぎじゃないか？明日は任務だろ、あんた。……そろそろ起きてきた方がいいんじゃないか？

俺ってさあ、あんたのこと、ちゃんと好きなんだよね。……ちゃんと好きで、ずっと思ってる。独占しちゃいたいなーって。あんたが俺のもんだって言い触らして回りたいし、俺のもんなんだぜって見せ付けてやりたい。……でも、あんたはどうなんだろうな。俺のことを好きだって思ってくれてんのは知ってる。聞いてるからね、「好き」って言ってくれるあんたの言葉を。でも、……俺の好きと、あんたの好き。似てるようで、多分、どこか違う。俺にとってはさ、あんたが特別なんだ。なあ、アリス。あんたが特別で……そんで、誰にも渡したくない。アリスが他のやつに好きだとか、俺としてるみたいに触れ合うとか、そういうことをしてるって思うだけで心底腹が立つ。ん？ああ、相手？……は、簡単には死なせてやんねえよ、急所は外してじっくり撃ち殺してやる。な、分かってよ。あんたは俺のとくべつなんだ。愛してるぜ、……ほんっとかわいい、俺だけのアリス。

俺は悪癖持ちの刀だという自覚がある。……あの男の元に合った刀だぞ、それくらい持ち合わせている。───だからこそ。お前の前では抑えて、心の中に秘めてやろうと思っているのに。少しずつ湧いてくる衝動が抑えられない。…………全く。人の心というのは不便なものだなァ。ただの鋼であったころなら、こんなことは考えなくてよかった……が。人の身があるからこそお前に触れられると思うと、悪くはない、とも思う。

………なんつうか。アイツと恋をしていたころはアイツにかかりっきりであんまりなかったけどよ。やっぱオレって甘やかされるタチなんだろうにゃあって自覚が湧いてきた。この間、御前が「お前さんが健やかであるならそれで構わんさ。」とか「お前さんが喜んでくれるだけで僕は満足だとも。」とか……にゃあ？…んな感じのこと言ってたけどよ。分かってんのかぁ？オレ、一応極めてるし練度も頭打ち───あ？んなこと関係ねえって、……。……はー、御前には敵わねえよ。