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120.賭狩《トガリ》
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6 :迅
2020/10/08(木) 23:04:12

「迅!こりゃ一体どう言う了見だコラァ!」

 頬に傷を負った強面の青年・黒木司佐は、机の上に脚を乗せる迅に怒鳴りつける。
 それもその筈、管理委員会の一般生徒への肩入れは原則的に禁止されているからだ。にも関わらず、迅は一般生徒に資金を支給した。本来ならば許されざる行為と言える。
 しかし、当の本人は司佐の剣幕にも怯まず、飄々とした態度で肩をすくめる。

「るっさいなァ。俺ァ彼|(ポチ)の出資者になっただけで、誰も肩入れはしてないヨ?管理委員とて出資者になる事自体は禁止されてないし」
「屁理屈はいいんだよ!とにかく、テメェは本来禁止されてる事をしたって自覚はあるのかって聞いてんだ俺は!」
「じゃあ証拠は?そんな単純な頭してるから単純なやり取りしか出来ない『ダイスゲーム』を統括してるんじゃ無いのカナ?黒木クン」
「テメェ……!覚悟は出来てんだろうなァ!!」
「……口の聞き方には気を付けろヨ?脳筋野郎」

 迅は飄々とした態度を崩さず、逆に司佐はギリリと歯噛みする。しかし両者は依然睨み合っており、一式即発に思われた次の瞬間───

「お辞めなさい」

 生徒会室に凛とした声が響き渡り、迅と司佐の視線が声のあがった方に集中する。

「私達は生徒達の模範となるべき存在です。その者達が我先に争うとは。一体どう言う了見です?二人とも、恥を知りなさい」

 振袖を着た少女はピシャリと告げ、同時に舌打ちした二人はゆっくりと自分の席に戻る。
 二人が椅子に腰掛けると、彼らを含む5人の『統括者』に囲まれた少女は高らかに、それでもって何処か寂しげな声色で語り出す。

「さぁ、最高のギャンブルを始めましょう」

 この学園では、勉学やスポーツの他にギャンブルの強さで全てが決まる。
 その決まりは絶対であり、決して覆る事のない不変の理|(ことわり)。勝者には『幸福』を与え、敗者には『絶望』を与える。
 勝てば天国、負ければ地獄。



【───次に賭けるは、己が命か他者の命か】

[引用]

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