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┗120.賭狩《トガリ》

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1 :迅
2020/10/08(木) 06:35:36

勝者には幸福を、敗者には絶望を。
勝てば天国、負ければ地獄。

次に賭けるは───
【己が人生か、他者の命か。】

ルール其の壱
『掛け値は事前に取り決め、必ず賭博管理委員会の身体チェックを受ける事。また、場内で不自然な行動をとった者は、今後一切の入場を禁止する』
ルール其の弐
『賭博管理委員監視の下、マークドデップの使用やグループで同じゲームでの賭博行為は禁止する』
ルール其の参
『多額の負債を背負った場合、「非協力傾向者」とみなされ賭博への参加権を剥奪される(下剋上など各イベントや出資者がいる場合は例外とする)』
ルール其の肆
『資産を得た場合、管理委員会または各賭場の統括委員長に申し出る事で、現金に換金する事が可能』
ルール其の伍
『イカサマをした場合、発覚次第即刻処分とする』

生徒達は以上の規則を厳守し、平等かつ自由に賭けを行う事とする。

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2 :迅
2020/10/08(木) 06:36:27

下準備:Dead or Live

「君の持ち札は結構良さそうな気もするけど……どうする?ヒットする?」
「ッ……」

 高鳴る鼓動、汗ばむ右手、そして恐怖と焦燥が重なって呼吸がどんどん速くなる。
 このブラックジャックのレートは、まさかの1チップ5万円。金額も金額で大概だが、それ以上に困る問題が一つだけある。

「(勝負に負けたら……俺の人生は……!)す、少しだけ待ってください……!」
「どーすんのサァ、次はバカラでゲームしなくちゃなんないし?俺だって暇じゃないんだよねェ。だから速く決めてヨォ」

 ディーラーはため息を漏らし、女生徒から受け取ったスケジュール表を巡りながらボヤく。
 「本当に良いのか?もしもスタンドしてしまったら、負けてしまうのではないか?」と、心臓がものすごい勢いで警鐘を鳴らす。
 一世一代の大博打とは行かないが、ここで負けてしまったら───考えたくもない。

「ひ……ヒットだ。はやくカードを……」
「やっと言ってくれた。今ので30秒無駄になったけど、今回は多めに見てあげるヨ」

 少年の言葉を受け取ると、フードを被ったディーラーは山札の上から素早く一枚引き抜き、彼の手下に引いたカードを滑らせる。
 彼はそのカードを手に取り裏返す。その裏に書かれていたのは ︎のJ|(ジャック)。

「(この手なら……いける!)合計21だ!」

  ︎の8、 ︎の3、そして ︎のJによって創り出された21に、周囲は「おぉ」と騒つく。
 一方、ディーラーのアップカードは ︎のK|(キング)。ホールドカードが未知数だが、スタンドしたなら数は限られてくる。

「(ディーラーが直接スタンドしたという事は即ち、手札合計数が17以上である事!)」

 勝利を確信し、ほくそ笑む少年の表情は───次第に絶望のそれに変わっていった。

「嘘……だろ……!?」
「ブラボーブラボー、なんか儚い期待持たせちゃったみたいだけどゴメンねェ。どうやら運命の女神様|(フォルトゥーナ)は、俺に微笑んでくれたみたいダネ」

 ディーラーのホールドカードは、 ︎のA|(エース)。
 ブラックジャックは手札の合計を21に近づけるゲームなのだが、万国共通のルールとして、21にも『ただの21』と『特別な21』が存在する。

「《ナチュラル・ブラックジャック》……非常に残念だけどさァ。お前の人生、終了だよ」

 少年の21が前者とするなら、ディーラーのそれは後者であり、絶対的な勝利の札。

「今まで頑張ってたようだけどさァ、その努力がぜぇ〜んぶ水の泡になっちまったよ!」
「うっ……うあぁ……!」
「さァ!トランプゲーム統括委員長・透形迅|(とおがたじん)に立ち向かい、そして見事に玉砕した彼|(愚か者)に盛大な拍手を!!!」

 ディーラー・迅が両腕をバッと広げた刹那、ホールから盛大な拍手と笑い声が挙がる。勝者を讃える拍手と、敗者を嘲笑|(わら)う笑い声。
 声援を受け止める迅は失意に溺れる少年の前に屈み、彼の耳元で囁く。

「まァこれかれ大変だろうけどサ、人に戻れるよう精々頑張りなよォ?《ポチ》ィ。ウヘッ、うははははははははは!!!」
「っ……」

その日、僕は人ではなくなった。

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3 :迅
2020/10/08(木) 08:00:42

1stゲーム:神と奴隷のゲーム
─────────────────────
《私立令皇学園|(しりつれいおうがくえん)》
 今年で創立100年を迎え、富豪名家の子女が通う格式ある由緒正しき学園。
 上位者が下位者を虐げる典型的なスクールカーストが存在するここではスポーツや学力のほか、あるモノで生徒の優劣が決目られている。

 スクールカーストと言われたら、まず容姿に長けた者達が弱者を陥れるのを思い浮かべるだろうが、ここじゃそうは行かない。
 この学園では、そのヒラエルキーすらも『あるモノ』によって一瞬で逆転する。

「はいストレートー」
「げっ、また君月の勝ちかー」
「相変わらず強いよねー、さすが次期トランプゲーム統括委員長ってとこ?」
「まだ迅|(アイツ)には勝てないけどね」

───それは、賭博|(ギャンブル)

「ポーカーなら絶対勝てるって!」
「それはどうかなー、あいつブラックジャック以外のゲームも余裕で強いし」
「だとしても、今年の統括委員長は粒揃いだよな。透形君なんか一年で統括委員入りだろ?」

 常識から隔離されたこの世界では、容姿の良し悪しや腕っ節の強さなどはステータスに過ぎず、勉学や賭博の強さで全てが決まる。
 しかし、ギャンブルで全てが決まるこの学園でも、覆せない上下関係は存在する。

「『ポチ』、カステラと紅茶買って来て!」
「……」
「へ ん じ は ?」
「っ……分かりました……」
「あ、じゃあ俺ランチパックな」
「私もー、よろしくねポチー」
「……はい」
「さ、続きをしましょうか♪」
「そんでさっきの続きなんだけどさー」

 『ポチ』と呼ばれた少年が外に出ると、扉の中から生徒達の笑い声が漏れて来る。彼は差し詰め、『奴隷』と言ったところだろうか。
 そして先ほども言った通り、この学園には『階級制度』が存在する。
 去年、彼はある少年に大敗し奴隷となった。

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4 :迅
2020/10/08(木) 22:07:56

「やあ、■■■君……いや、今は君月巳羽|(きみづきみう)の奴隷|(ポチ)だったかナ?」
「………」
「おー怖、そんな睨まないでヨォ。まぁ、俺達賭博統括委員に手ェ出したらどうなるか、解らないキミじゃ無いだろうけどサ」

 この学園でのギャンブルは、賭博管理委員会と呼ばれる組織がギャンブル全体を管理しており、各賭場に5人ずついる統括委員会が各管轄エリアに存在する各賭場を収めている。
 壁に背を預けた少年は、肩書きを『トランプゲーム統括委員長』、名を透形迅。
 1年前に『ポチ』を叩きのめし、彼から人としての名前と『生活』を奪った張本人。……もっとも、彼は賭けを楽しんでいただけだが。

「『納金』が出来ないのは一千万歩譲って仕方ないとして、出資者|(パトロン)の1人も作れないんじゃ、奴隷から『家畜』に仲間入りダヨ?」

 「ただでさえ非協力傾向者なんだからサ、しっかりしてくれよネ」と、彼は露骨な嘲りを込めて紙袋を『ポチ』に投げ渡す。
 彼は受け取った袋の中を確認すると、先ほど賭場で注文された品物と───50枚束にされた万札が入っていた。

「なんで───」
「どうせ巳羽とその取り巻きから言われたんだろ?本来はNGだけど、俺ァキミが底辺からどうのし上がって来るのか楽しみデネ。買い物も済ませたんだし、サッサと戻ったら?」
「いやそうじゃなくて───」
「じゃあの」

 彼の声を聞き入れる事なく、迅は『ポチ』の前から去っていく。
 『ポチ』は呆然としていると廊下を行き交う他の生徒達から痛い視線が飛んで来るため、彼は足早に賭場へ戻って行った。

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5 :迅
2020/10/08(木) 22:41:01

「ただいま帰りました……」
「あ、おかえり〜……そうそうポチ。あのさぁ私ィ、足がむくんで来ちゃったなぁ〜」
「ッ!!」
「おいポチ、巳羽さんが困ってんだろうが」
「さっさとついてあげなよォ〜」
「っ……はい、ただ今……!」
「はぁ〜楽チン楽チン」

 いつの時代でも階級は絶対だ。その不変の掟に逆らう事など、絶対にあってはならない。
 逆らえば管理委員会からの報復が待っているし、例え逆転しようにも、とてつもない金額の『奉納金』が請求されるからそれも無理。
 要するに、『詰み』なのだ。

「ロイヤルストレートフラーッシュ!」
「うおおマジかよ!」
「イカサマ仕込んでんじゃね?」
「まっさかー、奴隷じゃ無いんだしさー」

 巳羽が零した一言を皮切りに、周囲に居座る彼女の取り巻き達がドッと笑い出す。
 例え悔しくても、彼女達の『奴隷』である彼に言い返す権利は無く、ただ歯を砕かんばかりに食いしばる事しか出来なかった。
 だからこそ───

「オラ、しっかり働けよ『ミケ』」
「ホント。『奴隷』の分際で栗崎君に買われるなんて、烏滸がましいにも程があるんだから」
「それな。ありがたく思えよ?奴隷ちゃん」
「……」

 絶望と失意に溺れる中で、僕は彼女との出会いを果たす事が出来たのかもしれない。

「(綺麗だ……)」

 全てを投げ捨てた僕にとって、強い意志を宿した彼女の瞳……彼女の存在は、巳羽の付けている悪趣味な装飾品よりも輝いて見えた。

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6 :迅
2020/10/08(木) 23:04:12

「迅!こりゃ一体どう言う了見だコラァ!」

 頬に傷を負った強面の青年・黒木司佐は、机の上に脚を乗せる迅に怒鳴りつける。
 それもその筈、管理委員会の一般生徒への肩入れは原則的に禁止されているからだ。にも関わらず、迅は一般生徒に資金を支給した。本来ならば許されざる行為と言える。
 しかし、当の本人は司佐の剣幕にも怯まず、飄々とした態度で肩をすくめる。

「るっさいなァ。俺ァ彼|(ポチ)の出資者になっただけで、誰も肩入れはしてないヨ?管理委員とて出資者になる事自体は禁止されてないし」
「屁理屈はいいんだよ!とにかく、テメェは本来禁止されてる事をしたって自覚はあるのかって聞いてんだ俺は!」
「じゃあ証拠は?そんな単純な頭してるから単純なやり取りしか出来ない『ダイスゲーム』を統括してるんじゃ無いのカナ?黒木クン」
「テメェ……!覚悟は出来てんだろうなァ!!」
「……口の聞き方には気を付けろヨ?脳筋野郎」

 迅は飄々とした態度を崩さず、逆に司佐はギリリと歯噛みする。しかし両者は依然睨み合っており、一式即発に思われた次の瞬間───

「お辞めなさい」

 生徒会室に凛とした声が響き渡り、迅と司佐の視線が声のあがった方に集中する。

「私達は生徒達の模範となるべき存在です。その者達が我先に争うとは。一体どう言う了見です?二人とも、恥を知りなさい」

 振袖を着た少女はピシャリと告げ、同時に舌打ちした二人はゆっくりと自分の席に戻る。
 二人が椅子に腰掛けると、彼らを含む5人の『統括者』に囲まれた少女は高らかに、それでもって何処か寂しげな声色で語り出す。

「さぁ、最高のギャンブルを始めましょう」

 この学園では、勉学やスポーツの他にギャンブルの強さで全てが決まる。
 その決まりは絶対であり、決して覆る事のない不変の理|(ことわり)。勝者には『幸福』を与え、敗者には『絶望』を与える。
 勝てば天国、負ければ地獄。



【───次に賭けるは、己が命か他者の命か】

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7 :迅
2020/10/10(土) 08:46:17

2ndゲーム:奴隷と奴隷のゲーム

─────────────────────

 昔々、令皇学園にはある勝負師がいた。
 彼はどんなゲームでも勝利を収める実力と、どんなイカサマも見逃さない鋭い洞察力と、類稀なる極運を持ち合わせていた。
 彼は数多の博徒から、畏怖と尊敬の念を込めて『賭狩|(とがり)』と呼ばれたが───

彼は突然、博打の世界から姿を消した。



***



「では、今回の授業はここまでです。それでは皆さん、また明日会いましょう」

 鐘の音が授業の終わりを告げ、生徒名簿を持った女性教師は教室から出て行く。
 ここ令皇学園は、普段はごく普通の私立高校となんら変わりないのだが、放課後になると共に全く異なる姿へと変貌する。

『ゴミクズ共!賭博管理委員のラジオタイムだぜ!MCはこの俺、黒騎司佐とォ!?』
『私、幸光姫乃が担当させて頂きます』

 刹那、クラス中から歓声が上がる。
 品行方正、文武両道、如何なる褒め言葉をかき集めようと、この学園にはそれらの言葉は全く響かない。それどころか、むしろ学園に対する最大級の侮辱に成りかねない。
 この学園最大の褒め言葉は───【狂気】。

『今回は、奴隷や家畜共の為に《下克上》を開催するぜ!ルールは簡単!本来なら参加権を剥奪されてる敗者|(ナード)共も参加可能!さらに勝利倍率は驚愕の13倍!こりゃスゲェ!』

 司佐はややオーバーリアクション気味にレートを表示し、クラス全体がざわつく。
 これぞまさしくハイリスクハイリターン。勝てれば相当な資産を得る事が出来るが、負けた時は相応の損失を覚悟しなければならない。
 そんな彼に続くように、姫乃は落ち着いた美しい声で注意事項の説明を開始した。

『しかし参加には出資者の存在が必要になりますので、出資者が居ない方は依然参加は出来ません。これは規則ですのでご了承下さい』
『そんじゃテメェら───』
『史上最高に、それでもって最狂に───』
『『賭け狂え(いなさい)』』

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8 :迅
2021/07/14(水) 20:40:01

「さぁさぁいらっしゃい!今回は『下剋上』開催記念で、普段よりも多く換金するよー!」

 『換金所』と書かれた看板の下で、舞踏会用の仮面で目元を隠した男子生徒が高らかに言う。
 ───『下剋上』。
 その名の通り、『家畜』や『奴隷』と言った下層階級の人間が、上層階級の人間に叛逆する機会が与えられる唯一のイベント。
 出資者と呼ばれる存在がいなければ参加は出来ないが、『借金』を借りて参加することは出来る。
 奴隷脱却を目指す者達にとって、『下剋上』はまさしく干天の慈雨であり、唯一無二のチャンスだった。

「あの、巳羽様……お手洗いに行ってもよろしいですか?」
「さっさと済ませて来てよね」
「は、はい。ありがとうございます……」

 『ポチ』は周囲からの視線を受けながら、男子トイレに向かう。『下剋上』と言う一大イベントが開催されるだけあって、校内の至る所がお祭り騒ぎだった。

「やっとあいつらに復讐出来る!」
「俺、今日で奴隷から抜けるんだ……!」
「君と一緒に奴隷から抜け出せたら、付き合おう!」
「うん、待ってるね」
「(やっぱりすごいな……)」

 廊下には、様々な人間がいた。
 叛逆の機会に喜ぶ者、意気込みを熱く語る者、絶対に叶わぬ愛を約束する者。
 『ポチ』は、かつてそう言った者達を侮蔑の視線で見ていた事を思い出す。

「(それが今じゃ、皮肉なもんだな……)」
「やぁやぁ、楽しそうじゃないの」
「ッ!!」

 トイレに向かって廊下を歩いていると、不意に背後から声をかけられ、『ポチ』は声の方に振り返る。
 そこには、前髪で目元を隠した長身の少年が壁に背を預けていた。

「お前は……!」

 『ポチ』が警戒を露わにすると、肩をすくめた少年はヒラヒラと手を振り、敵意はない事を伝える。

「いやだねェ、ボクはただ君の様子を見に来ただけなのにサ」
「何のつもりだ?」
「べつに?支援者が受領者の様子を見に来るのは自由だろう?」

 少年は前髪をかき上げ、一房垂らしてそれ以外を髪留めで止める。
 いつも飄々としているが、今回は普段よりも酷い。
 本当に、掴みどころのない男だ。
 少年は壁から離れると、ポケットに手を突っ込んだまま『ポチ』の目の前に立つ。

「君には期待しているよ。だから期待を裏切るような事をしたら、分かるよね?」
「望むところだ」

 相対する『王』と『奴隷』。
 しばらく対峙していると、不意に少年がふっと口許を緩め、踵を返して去っていった。

「相変わらず読めねぇな……」

 すると突然、全身に悪寒が走る。
 そして、思い出したように『ポチ』はトイレに駆け込んで行った。

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