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186 :すき焼きのタレ
2022/04/01(金) 00:33:03
”同士”が消えた今、私に出来る事はただひとつ。
陽希さんを”同士”にすることでした。
優しい陽希さんなら、きっとパンの良さを分かってくれるはずです。
コンビニでパンを3つ、7pt分買い、丁寧に鞄にしまい学校に着くと、靴箱の前で陽希さんが手紙のようなものを読んでいました。
私のも読んで下さったのでしょうか。思わずにやけながら近づくと、陽希さんはこちらに振り向き、手紙も隠しました。
「あ、ももちゃん。おはよ」
「お……おはようございます」
今、手紙に『……まつり』と書いてあったような気が……
「あの、それって」
「あ、ごめん。ミーティングがあるから、もう行くね」
尋ねようとすると、陽希さんは慌てて行ってしまいました。
もしかすると、陽希さんも”同士”?
もしそうだったら。私は陽希さんとパンについて語る未来を想像して、またにやけてしまいました。
それから、私は『パンまつり』に全力で取り組みました。
1日にパンを10個買いました。おそらく『パンまつり』が終わるころには、私は太ってみっともない姿と化していることでしょう。
ですが、それも陽希さんのことを想えば……なんてことありません。
ポイントは200を超え、自身の過去最高記録に到達しました。陽希さんはどのくらい貯めておられるのでしょうか……期待を重ね、パンを食べ重ね1週間。
やがて『パンまつり』最終日を迎えました。
陽希さんと出会ったときには咲き始めたばかりだった桜も、少し散り始めていました。
今日は『パンまつり』最終日。勇気を出して、陽希さんをパンの買い物にお誘いしようかと考えています。
校舎の外に出ると、陽希さんが待っています。
不安と緊張でなかなか外に出ることができず、私は普段は見向きもしない校内新聞を凝視していました。
【今こそ問います あなたはどっち派?
パンvsご飯】
あっ。こんなアンケートを入学早々新聞部の方々にされた記憶があります。私は無論、前者です。
アンケート結果は――パン300人、ご飯300人。なんと、同率でした。
パンを好きな方がこれほどいらっしゃるとは……ご飯派の方々にもいずれはパンを好きになってほしいなと、そう思いました。
「ももちゃん、全然来ないと思ったら」
「あ!すみません!」
気付けば後ろに陽希さんがいました。私はどれほどの時間、陽希さんを置き去りにしてしまったのでしょうか。パンのことを考えすぎて、忘れてしまいました。反省……
「これ……パンとご飯……なんでパンを先に書くの?あり得ないでしょ。それにどっちも同じ人数って、どこのパン好きに忖度してんだよ」
「えっ?」
「こんなにパン派が多いわけないって。米は、日本人と人生を共にする永遠の友だよ?ご飯こそ正義である。パンこそ、悪である。小麦の無駄遣い。麺でも作ってろや、カス」
え?……言葉が出ませんでした。
目の前にいる、あこがれの、かっこいい”淑女”だったはずの存在が、今はくだらないただの”阿婆擦れ”のようにしか見えなくなってしまったのは、かつて誰かが言っていた”自分と対立する”人間であるから、なのでしょうか?
「陽希さんって……パン、好きじゃないんですか?」
「はっ?パン好きとかあり得ねえー」
ケタケタ笑う陽希さん、のような阿婆擦れは見ていられません。私は嫌になって、走って外に出ました。
「ちょ、ももちゃん」
ですがバスケ部キャプテンに、運動もせずパンを食べるだけの少女が走りで勝てる訳がありません。
「ちょ……いたっ!」
鞄を引っ張られ、私が転ぶと同時に、鞄の中から、総合計22pt分のパンがゴロゴロ地面に溢れました。
それを見た彼女は、真顔になりました。
「えっ……まさか、ももちゃんって、そっち?」
私は黙っていると、彼女は私をひどく軽蔑する目で言いました。
「ガッカリだわ」
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