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184.小説のネタを出したら他の人が勝手に短編仕上げてくれるスレ
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187 :すき焼きのタレ
2022/04/01(金) 00:33:17

「ちょ、待って。無理無理……」
彼女はふいに体を強張らせました。
「親しくしてた人間の中にこんな奴がいるとか、ほんと無理なんだけど……寒気してきた」

私も寒気がしました。
ここまでパンを否定する人間がいたなんて。
「な、なんで、そこまでパンがお嫌いなんですか」
「えっ、なんでって……パッサパサで不味いし、気持ち悪い」
……それだけ?それだけで、パンを毛嫌いするんですか?どんどん怒りがこみ上げてきました。
「あの手紙の『まつり』って!あれは、『パンまつり』じゃないんですか!?」
思わず叫びました。淑女でなければという考えは、彼女の前では捨てることにします。
「そんな見てたの?なら、敵の君に教えてあげるよ。私達”ご飯ガチ勢”は、春がとても嫌いだった。パンだけが優遇される、この季節が」
風が強まり、桜が激しく散っています。
「だから私達は、創るの。『春のご飯まつり』」
彼女は桜の花びらをピッとつかみ、座り込む私にじっと見せつけました。
「見て。桜って、米粒の形をしてるでしょ?」

「陽希さん!」
「リーダー!」
突然学校のいたるところから、彼女を呼ぶ声が聞こえてきました。見渡すと、いくつもの窓から人々が顔を出し、玄関からはたくさんの人々が飛び出してきました。
「ごめんね。バスケ部キャプテンという最高の権力を借りて、私はこの学校を蹂躙した。対抗勢力は、粛清する」
彼女がそう言った瞬間、彼女の周りに集まった人達が一斉に私を見つめました。しゃもじを構えた料理部も大勢……いいえ、全員が家庭部なのでしょうか?
私は直感しました。いろいろな意味で殺されるかもしれない。その時、こんな言葉を思い出しました。

『仲間は、いつか必ず助けてくれるよ』

「みんな!!パンまつりだー!!!」
喉の奥が揺れ、無意識にそう叫んでいたのに気付いたときには、窓から顔を出す人数が倍に増えていました。
「ももさん!」
「リーダーは、あなたです!」
玄関から、グラウンドから、私の周りにたくさんの”仲間”が集まってきました。ほとんど知らない人でしたが。全員が、イチゴ、マーマレード、ブルーベリー……色とりどりのジャムをスプーンと共に抱えていました。

「どっちの『まつり』がアツイか、勝負しようぜ」

誰かがそう言った瞬間、ジャムを抱えた仲間が一斉に飛び出していき、しゃもじを持った敵と討ち合いました。呆然としている間に窓は割れ、ジャムが飛び散り、しゃもじが散乱していました。
「ももさん!逃げますよ!」
明らかに貴方の方が年上でしょうという方に引っ張られ、私達は校舎に逃げ込みました。
その間にも窓が割れ、ガラスが飛んできます。

「待てよ!!」
下から、敵勢力”ご飯ガチ勢”が階段を駆け上がる音が聞こえてきました。
「うっ」
すぐ横で私を守ってくれていた方が倒れました。頭にしゃもじが刺さっていました。
……イチゴジャムが溢れていたので、あまり実感が湧きませんでした。

どんどん人数が減っていく私達は必死で校舎内を駆け回り、上の階へと昇っていきました。
ですが、敵の軍隊は執拗に私達を追ってきます。
そこら中にしゃもじが散乱し、床はジャムで溢れてグチャグチャになり、人々が動くたびに足跡と混ざって、鮮やかな色になっていました。

「危ない!」
目の前にガラスが飛んできました。脳天に刺さる寸前で、隣にいた仲間が身を挺して守ってくれました。
「……!」今更恐怖が襲い、私は足を止めそうになりました。
「……リーダー!早く、行って!」
名も分からぬ仲間が後押ししてくれたおかげで、私は再び走り出すことができました。
「ありがとう!」

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