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193.『戦隊学園』制作スタジオ
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2021/06/15(火) 20:57:27
化学クラスの教室は現代アート展の会場のようだった。
何十ものフラスコがあちこちに置かれ、ボンと小さい爆発を起こしては色とりどりの液体を噴火させている。
壁は赤や黄色や青の染みだらけ。
生徒たちも全身に薬品を被りながら忙しそうに走り回っている。
「あのー、すいませーん!クラス見学に来ましたー!!」
楓がそう叫ぶ。だがこの喧騒の中で彼女の裏声は忽ち掻き消された。
「かわる。」
今度は私が言う。
「こん!聞こえますかー!!」
私が進み出ると、生徒たちは一斉に振り向いた。
「オチコボレンジャー、あぶれちゃった人でもOK。どのクラスでも受け付けます。」
「何だ唯の勧誘か。実験中の札が見えなかったのかい。関係者以外立ち入り禁止なんだよ!」
巨大なフラスコの中にすっぽり入り、色とりどりの薬品を浴びている男子生徒が叫んだ。
「あなたは?」
「元素戦隊アルゴレンジャーだ。理系を極めた我らに落ちこぼれなどいない、他をあたってほしいね!」
「はいはい。」
実験は再開される。薬品がビチッと飛び、私の白い腕に青い斑点が付いた。
「いこう楓。ここの人たちは、私たちとは無縁だよ。」
「え!何て?」
実験の騒音で私の声が聞こえないようだ。
「出よ!!」
私たちは実験室を後にする。固い木の扉をバタンと閉めると、喧騒から切り離された外の世界に戻った。
楓がこう訊いた。
「――ねぇ、あたしが叫んでも誰も聞かなかったのに、七海ちゃんが言ったらみんなが注目したのは何で?」
「それはたぶん、私の声を聞いたんじゃなく、私の外見を見て振り向いたから。」
そう。
私を見れば誰もが振り向くし、私の容貌を一般的だと思う人はいない。
「鳩たちの中にたった一羽、白い鳩が居たらそれは私。真白き鳩が目立つように、私も目立って居るからね。」
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