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193.『戦隊学園』制作スタジオ
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2021/06/15(火) 20:59:11
次に私たちは、専用エレベーターに乗って地下に向かった。
「地下には何があるの?」
「見てて。すっごいから!」
外は真っ暗で、ガラス戸に反射した私の顔が映っている。
すると突然、電車がトンネルから出た時のように、地下とは思えないほど広い空間が目に飛び込んできた。
「すっごいでしょ?」
私はガラス戸にへばりついて眼下のガレージ(整備工場)に見入った。生徒たちが運んでいる部品は巨大なプラモのパーツのようだ。
そこでは奇抜なデザインの車や飛行機などが整備されていた。
エレベーターが到着する。ガラス戸が開いたため私はずっこけそうになった。
「あはは!クールな七海ちゃんでも興奮するんだ!」
私はエレベーターを出て金網の上をカンカンと走る。
ヘルメットを被ったいかつい男共が、巨大なパワーショベルを見上げていた。
「あの、工学クラスの生徒さん?」
男共は私を一瞥した後。
「その端くれだ。俺たちは建築戦隊ジュウキマン。メカの設計をしているのは俺たちじゃない、メカニ戦隊デザインジャーだ。しっかし大した仕事っぷりだぜ・・・」
男共は巨大な重機を見て惚れ惚れとしている。
「その方たちはどこに?」
「Dガレージだ。しっかしお高い連中だからな。態度には気をつけろよ。」
「わかった。ありがとう。」
私は道しるべをたどってDガレージに到着した。
腰を抜かしそうになった。
古都の大仏ほどもあろう巨大ロボットが胡座をかいていた。
頭はすっぽりと白い布に覆われている。
「パンフにもあったけど本当だったんだ。学園がロボの開発をしてるって話・・・。」
近付いてみると更にド迫力だ。
ロボットの傍では白衣を着たポンパドールの女子がノートパソコンをパチパチと打っている。それに呼応するように、ロボットは手をグッパーと動かした。
「近づかないで?」
次の瞬間ロボットが腕を伸ばし、私の胴体を掴んだ。
「うわ!」
「七海ちゃん!」
私は軽々と宙に持ち上げられてしまった。
「下ろしてよ!」楓が叫んでいる。
「LRの惨劇を招いた不幸の少女、小豆沢七海。もう1人はというと芋ね。私たちは学園中の戦隊のオーダーを受けてメカを設計しているの。この神聖な空間に何の用かしら?」
女子生徒は10人くらい固まってけらけらと笑っている。
私はムッとして返した。
「ユニット組んでくれる人を探しに来たんだけどやめにした。」
「へえ、何で?」とポンパドール。
「あなた青でしょ?青じゃ楓とダブるから。同じ青なら楓の方が、よっぽど綺麗だから。」
ポンパドールの顔から笑いが消えた。
「見えてんの?」
「七海ちゃん・・・」不安そうな声を出す楓。
だが私は売られた喧嘩は買う主義だ。親友を芋と呼んだ奴らは許さない。
「うん見えてるよ。汚れた青だね。」
「プはッ」
女子生徒の1人が笑い声を漏らした。
「笑うな、うざい」
ポンパドールは怒りに震えているようだ。
「変身メカニブルー!」ガクセイ証に呪文を吹き込み青い戦士に変身した。
本当に濁った青だ。
「自分の置かれている状況をご存じなくて?ダイブツジン!握り潰せ!」
ロボットは作り主の命令を受け指の関節を曲げていく。
「ううっ!」潰される。息ができない。
「他人のカラーが見えてるなんて、あんた気持ち悪いよ。」
苦痛と同時に思い出した。小学生の頃、皆に言われたあの言葉。
「何やってんの?七海ちん。」
「え?みんなの色をメモッてるだけだよー。できればいろんな色の人と友達になりたいなと思ってさぁ。」
「で、私は黒だからって、遊ぶ約束破ったわけ?」
「違うよー。あれはごめん、本当に忘れちゃった・・・芽衣はたしかにぞっとするほど心が黒いけどね。」
「へぇ。」
「本当に気持ち悪いことばっか言うね。美鈴ものぞみも萌も、あんたのこと気持ち悪いって、言ってたから。誰もあんたの友達にはならないよ。」
ロボットはパッと手を開き、私は金網の上に崩れ落ちた。
「七海ちゃん大丈夫?」
「平気。お昼だしもう行こ。」
私は立ち上がると、踵を返してエレベーターに向かう。
「なかなか人が集まらないねぇ・・・。」
エレベーターに乗り込む時、女子生徒のうちの1人がこちらを見ているような気がした。
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