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193.『戦隊学園』制作スタジオ
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2021/06/18(金) 02:21:34
私は魔法クラスに転入した。
1年の前期は“戦隊の歴史”、“戦隊体術基礎”などつまらない必修科目を受けて過ごすようだ。
放課後、部活のようにオチコボレンジャーの皆と集まる時間だけが楽しみだった。
「よぉ七海!」
「あれ?一番乗りだと思ったのに。」
和室には公一の姿があった。畳の敷かれた居心地の良いこの部屋を部室のように使用することにしたのだ。
「俺んとこ昼ないねん!」
「あ、そだったね。」
私は教科書の入ったカバンを置くと、靴下を脱いで自室のように寛ぐ。
「佐奈もおるで。」
「え?」
よく見ると狭い和室の隅っこに、寝そべってパソコンを打つ佐奈の姿があった。
私は「お疲れ様ー」と声をかける。だが佐奈は返事をしなかった。
「お取込み中みたいだね。」
ふと、公一が私の足の指をじっと見ていることに気付いた。
「みんなよ、スケベ。」
「え?い、いやそういう意味ちゃうねん!!足の先まで真っ白やなあと思って。ハーフなんやっけ?」
私は足の指をうにゅうにゅと動かしながら言う。
「違うよ。これはアルビノって――」
するといきなり戸がバンと開いた。
「うぁーめっちゃ疲れた!糞つまんない名乗りの作法で居残りさせられた!」
楓は入室するなりカバンを放り出し畳に寝転んだ。
「俺はこの後授業やで!深夜の授業めっちゃしんどいねん。昼夜逆転するし!」
「えーまじ?あたし朝早いほうが苦手だよ!交換する?」
フランクに会話する楓と公一。
中学時代は一匹狼的だった私にとっては何ともほほえましい光景だった。
「でね。私の肌についてだけど――」
「なに?何の話?」
楓が喰い付いた。
「白い理由を聞いとんねん!」
混じり気のない真っ白な髪、乳白色の肌、澄んだ青の瞳は私のトレードマークのようなもの。
「ああこれはアルビノって言ってね、遺伝子疾患なんだよ!メラニンが無いから光に弱いんだけど、それ以外は普通の人と変わらないから!」
何故か楓が張り切って説明した。
「いやなんでお前が全部説明すんねん。お前は七海の何なん?」
「あ・・・」
楓はお喋りが過ぎたと思って苦笑いしながら口をパクパクさせた。私は一言、
「楓は私の彼女だからな。」
「え?」
「そういう関係?」と佐奈。
「ブヒ~!お待ちかね!」
豚之助がドスドスと入室した。100キロ超の巨体に踏みつけられ畳がめこっとへこんだ。
そして彼と共に、食欲をそそるいい匂いが部屋の中に飛び込んできた。
「大之助特製ちゃんこブヒ!僕の地元から送られてきた魚介類をたーっぷり使ってるブヒよ!」
豚之助は手に持っている大きな土鍋の蓋を開けた。
豆腐や野菜と一緒に、ぷりぷりの海老や帆立が煮込まれているではないか!
「わあ!」
「すご!」
「うっまそ!」
皆目を輝かせる。
「これで1日の疲れを取るブヒ!」
「俺は授業まだやけどね」
私たちは5人そろって鍋を囲み、「いただきまーす」と詠唱した。小鉢は使わず直接箸で突っついて食べる。
「うま!最高や!」
「佐奈もたっぷり喰って大きくなるブヒよ。」
「ありがと・・・って、暗にチビって馬鹿にしてる!七海さん、こいつ馬鹿にしたよ!」
「まあまあ。」
私は海老を掴み取り、まだ熱いまま噛みちぎる。
「おいしいじゃん豚之助。よし、もっとおいしくしよう。」
私はカバンから携帯唐辛子を取り出すと、鍋全体に多量に振りかけた。
「わあ!なにしとんねん!!みんなの鍋を!!」
「プピー!」
「辛くて食べられないんだったら残していいよ。私が全部食べるからね」
私はハハハと不敵にに笑う。
湯気に包まれる中、楓が隣から囁いた。
「ねえ、彼女って本気?」
「んなわけあるか」
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