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193.『戦隊学園』制作スタジオ
 ┗152

152 :9
2021/06/18(金) 02:32:35

「ストライク!」
「くぅ!」
レッドピッチャーの剛速球に、公一は大きく空振りした。
私はベンチから声を掛ける。
「公一!そんな大振りじゃ当たんないよ!」
「知らん!野球なんて初めてやし見たことも無いんや!できるわけあるか!」

レッドピッチャーは振りかぶって、投げる。

「こんニャロ!」
ズバン!とミットに命中する轟音。公一は空振り三振となった。
「バッターアウト!」

バットを引きずり帰ってくる公一。楓が叱責する。
「何してんだよぉ!」
「あんなん打てるか!投げたと思ったらもうキャッチャーのミットの中やねん!お前が打ってみぃや!」
「いいよ!あたしも初心者だけど、ビギナーズラックでホームラン打っちゃうかもよ?」
楓が打席に向かう。
「楓、塁に出ることを考えて。私に打順を回して。」
「えー?」
私は叫んだ。
「ホームランじゃなくて、塁に出ることを考えて!!」

「何言ってんの?塁に出ても点にはなんないじゃん!ホームラン打ったら得点!見てて!!」

「素人は・・・」
私はベンチに座り込む。

ズバンと言う轟音、楓のきゃあという悲鳴。案の定、空振り三振に終わった。

「豚之助、あなたならやれるよね?期待してるから。」
「ブヒー。七海ちゃんに応援されると照れるブヒ。必ず七海ちゃんに打順を回すからね。」

豚之助は大きな体でバッターボックスに入る。
球が投げられた。
バキッと言う音、この試合で初めてバットがボールに触れた。豚之助は流石の強肩でボールを三遊間に飛ばした。
これならば間違いなく出塁できる。私に打順が回ってくる。

だが豚之助は有り得ないほどに鈍足であった。ぼてぼてと、まるで水の中を歩いて居るのかと言うようなスピードで走る。しかも、
「馬鹿!そっちは三塁だよっ」
「ブヒー!間違えた!」
豚之助は間違えて三塁方向に走ってしまっていた。ホームランジャーの面々は笑い転げる。遊撃手が球を一塁に送り、アウトとなる。
「スリーアウト、チェンジ!」

「馬鹿之助・・・」
ついに打順は回ってこなかった。

攻守交代。ホームランジャーの攻撃、恐ろしい時間の始まりだ。
「い、いくでー!」
ピッチャーの公一はキャッチャーの豚之助めがけて球を投げる。


顔面に激痛が走り私は倒れた。

「か、かんにん!!」

その球はボールになるどころか、何故かショートである私の顔にめがけて飛んだのだ。またもやホームランジャーは爆笑する。
「公一。あとで金玉潰すからね。」
「ボーク!」

公一はガクガクと震えている。
「焦らなくていいから、手裏剣の練習だと思ってやってみて。」
「よ、よし。」

公一は2球目を投げた。今度はまっすぐに飛んだがヘロヘロ球だ。
カキンと言う快音。
球は青空を飛び校舎の裏に消えて行った。場外ホームラン。


そしてツーアウト(私の好守備によるもの)を迎える頃には、ホームランジャーは私たちに33点と言う大差をつけていた。


緑のバイザーの下に、目を真っ赤にして鼻水を流している公一の無残な顔が見えた。
「公一、変わろっか。」
「もっと早めに変わって!?」

私はマウンドに立つ。

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