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193.『戦隊学園』制作スタジオ
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183 :第6話 1
2021/07/01(木) 22:12:36
戦隊学園、5月のとある昼休み。
七海たちはB校舎3F・飲食スペースにて、4人で20個の菓子パンを平らげつつオチコボレンジャーの打ち合わせをしていた。
「ホームランジャー、ソウサクジャー。これで2pts。決勝進出にはあと8つの勝ち星が必要・・・。」滔々(とうとう)と話す七海。
楓が横槍を入れる。
「ここまで勝ち残れただけでも奇跡じゃね?」
その言葉は学園内の世論を的確に表していた。
学園通信は『最弱オチコボレンジャー、奇跡の快進撃! 2連勝!!』と大々的に書き立てた。あること無いこと何でもネタにするシンブンジャーのその記事によれば、戦-1の優勝予想にて、オチコボレンジャーは最下位200位から156位に大躍進したそうだ。
「弱そうな戦隊は大方初戦で敗退したみたいだし、ここからは厳しい戦いになるかも・・・って、聞いてる?」
豚之助は菓子パンでは飽き足らずどんぶりをかっ込み、楓と佐奈はデスクワークをしていた。
「七海ちゃん!戦歴(戦隊の歴史)の課題写させて!」
楓のノートは菓子パンがぼろぼろとこぼれて汚れているではないか。
「やだよ、べぇ。」
七海はあかんべーをした。
クラスの違うこのメンバー、昼休みや放課後の会合は楽しいひと時でもあるが。
「見せてくれないならバラしちゃうよ!公一君とのやらしい事!」
「ばか!」
波乱、佐奈と豚之助は一斉に七海を注視した。
「何?七海さんその反応は、何か隠してるでしょ。」
佐奈は丸眼鏡の下から七海を睨む。楓はしてやったりの表情だ。
七海は仕方なく話す。
「・・・キスだけだからね。しかもマスク越しで、あれノーカンだから。」
「ゴム付きってこと?」
「八つ裂きにするよ楓。」
ちなみに公一は深夜の忍術クラスの授業にそなえ寮で寝ている。
佐奈は「ふぅん・・・」とドライな反応を示し、豚之助はブヒブヒ鳴いた。
「ブヒー!七海ちゃんとちゅーしたかったブヒ!」
「だから、あれは違うんだって!!マスク越しだから、1stにはならないの!」
「ブヒブヒ!じゃあ七海ちゃんの1stは僕が貰うブヒ!いただきまーす!唇にちゅー!」
七海に襲い掛かる肥満体の豚、それを見て魂の抜けたような顔をする楓。今日の午後は平和だ。だがその平和が壊される。
「またチビって言った!もうオチコボレンジャー抜ける!」
ポニーテールを振り乱して席を立ったのは佐奈であった。立ち上がっても座っている七海の身長ほどしか無いのだが。
「ブヒ!?今チビって言ってなくない?」
「言ったよ言った!うちはこの耳でちゃんと聞きましたぁー。言ったよね、七海さん?」
七海はたらこ唇ですぐそこまで迫っている豚之助を蹴り飛ばして、
「くちびる、って言ったんだよ。佐奈のことじゃないよ。」
「え・・・でも確かにチビって聞こえたんだけど!うちが小学生の弟より身長低いからって、馬鹿にしてる!今のでチビって言われて1000回目です。もう抜けるから。豚之助なんかとは、同じ戦隊に居られない。」
佐奈はご丁寧にノートにチビと言われた回数を記録していた。
「貸して!」
七海はノートをひったくる。そこにはびっしりと正の字が書き綴られている。「こんなの書いてるからよくないの!」七海はそれをビリビリに破り捨てた。
「七海さん、豚之助の肩を持つの?」
ドスン、と揺れが走る。
「いい加減にして。佐奈も豚之助も、オチコボレンジャーの大事なメンバーだから。仲間割れはやめて。敵は他にいるでしょ?」
再び、ドスン。
「ねぇ七海ちゃん。喧嘩してる場合じゃ、ないみたいだよ・・・」
楓の言葉を聞き、七海は恐る恐る、振り向いた。窓の外に巨大な影が見えた。
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