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193.『戦隊学園』制作スタジオ
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190 :8
2021/07/01(木) 22:28:16

ピンク色のパジャマを着た佐奈の姿があった。

「引っ越しゅぅってこういうイミだったの?」
「あふぅ・・・見つかったか。まぁわざと見つけやすいようにしたんだけどね。七海さんの部屋の真下がちょうど空き部屋だったから、移動してきちゃった。ついでに通路も作って、こっそり行き来できるように、ね。」

「それナイス!」
七海は本棚に目をやった。工学系の本がずらりと並んで居る。と思いきや。
「んん?何これ。」
漫画本が紛れ込んでいた。
手に取ってみる。
開くとキラキラの少女漫画だった。顎の尖った成人男性が2人で手を繋いで夜景の海を歩いている。七海は、たまたま数奇なページを開いてしまったのだろうと都合のいい解釈をしたが、他のページをめくっても大体同じような塩梅だったので、ひどく失望した。

「ねぇこれってBL?」

佐奈も七海と同じく風呂上がりだったのだろう、長い黒髪を下ろしている。
「うぅ・・・引かれた。でも七海さんも、3分読めばきっとハマるよ。貸してあげよっか?」

「別に。」
七海はその巻を棚に戻し、違う巻を手に取ってみた。お次の巻では顎の尖った男がエプロン姿に豹変していたので、七海は危うく本を取り落としかけたが、同時にもっと見たいという感情が芽生えてしまった。

「――ねぇ、やっぱ借りていい?」
「お好きにどうぞ。」

七海は無言で活字を読み始めた。


「七海さん、今日はごめんね。」

「へ?」
七海は素っ頓狂な声を出した。佐奈からそんな言葉が出るとは思っていなかったのだ。
「うち、本当はコボレンジャーを辞める気なんて無い。ていうか、ここ以外にうちの居場所なんて無いし・・・。」
佐奈はパソコンから目を離さずにそう言った。
「気にしないで、お互い様だし。何してるの?」
七海はパソコンの画面を覗き込む。

昼間の巨大ロボの戦いの動画が流れていた。

「録画してたの!?」
「違う。ガクセイサーバーのYUTAチャンネルで見逃し配信してるから、見ていたの。」
「研究熱心なんだね。」

次に佐奈は動画を一時停止し、手元の紙に定規を当てて線を引いた。

「うわ!すごい!」

佐奈は原稿用紙にジュウキオウの姿を正確に模写していた。
しかも1枚だけではない。様々なアングルからの模写が何十枚も机の上にあった。
「別に、ふつうでしょ。」
「そんなことないよ!私感動しちゃった。」
「構造がわからなきゃ強さを理解したことにはならないし、でも大体わかった。見ててね七海さん。うちは絶対、コボレンジャーのロボを作るから。」

佐奈は別の原稿用紙を取り出した。そこに描かれているのはジュウキオウではない。
何か人型のものが鉛筆で下書きされていた。4、5個あるように見える。

「これ何だかわかる?」
佐奈は小さな銀のツメの様なものを取り出した。
「知ってる、Gペンでしょ。漫画を描く時に使うやつ。」
「ピンポーン。」
銀のツメをペン軸に刺し、ペン先を黒いインクに浸ける。ツメの部分に表面張力でインクがくっついている。

そこからは一瞬だった。
佐奈はシャッシャッと、凄い勢いで下書きをなぞった。七海は声も出さずにそれを見ていた。原稿用紙に浮かび上がったのは、4体のロボであった。

「4体のロボは合体すると、大きな1つのロボになるの。うちならデザインジャーを超える物を作れる。」

「でも、1つ足りないよ?」
佐奈は振り向く。
「豚之助の分は無いから。」

「まだそんなこと言ってるの!?豚之助はコボレンジャーのために相撲を取ってるんだし、少し陰湿じゃ無い?」

「・・・」
佐奈は付けペンの持ち手部分を噛んだ。
「そうかもね。」

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