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193.『戦隊学園』制作スタジオ
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2021/07/01(木) 22:36:19
豚之助は時間ギリギリに土俵に現れた。
四日目の土俵は満員大入りとまではいかずとも、初日とは比べ物にならないほど人が入っていた。風変わりな戦-1の試合と聞き、興味を持った生徒たちがオチコボレンジャーの負ける様を拝みに来たのだ。
そしてその大勢の客たちは、大ブーイングを起こすことになる。
豚之助は立ち合いで左に変わった。
霞緑は何とか堪えるも、直後に横から突き落とされた。豚之助は何とか負け越しを凌ぎ、初日を出した。
客たちは大声で豚之助を罵った。
「ちゃんとやれ!」「恥知らず!」等はまだいいほうで、「豚野郎!」「退学しろ!」等と、明らかに相撲とは関係の無い、人格を否定するような罵声や怒号までが飛んだ。
勝ったというのに、豚之助の落ち込み方は異常だった。七海や楓が何と声をかけても無視を貫いた。
「ほんとあいつら最っ低!最初に変わったのはあいつらじゃん!何でこっちばっかり責められるの?気にしないほうがいいよ豚之助!」
楓はブチギレて東の支度部屋の扉を破壊しようとして止められた。
「ごめんね豚之助。私があんな作戦を提案したばかりに・・・相撲をわかってなかったのは、私のほうだった。」
豚之助は一言だけ返答した。
「一日一番、集中するだけブヒ。」
一勝三敗、後の無い状態で迎えた五日目。相手は技巧派の青龍丸だ。
今日こそオチコボレンジャーの敗北を見届けようと昨日以上の客が詰め寄せ、札止めとなった。
客たちは豚之助が土俵に上がるなり「青龍丸!青龍丸!」とコールを贈った。砂かぶり席の七海と楓にはそれが「豚之助負けろ」と聞こえた。観客たちのその行為は、気に入らない者を大勢で無視する、いじめ者の姿そのものであった。
楓は「豚之助ー!」と叫んだが、大音声の相手のコールにかき消され、完全アウェイ状態となった。
「大一番だというのに、さっちゃんと公一は?」
「公一は連絡したんだけど、“重要な潜入活動の実践中や”とか言ってた。チームの応援より自分の活動優先って、ちょっと見損なったけど。佐奈は・・・うん、豚之助とは犬猿の仲だから。」
「寂しいな。なんか、バラバラだよね。」
「うん。」
時間一杯となり、館内は爆発的な歓声に包まれる。
「待った無し!」
豚之助は仕切り線に手をついて、青龍丸と睨み合う。
青龍丸は小声でこう言った。
「お前も今日でお終いだな。」
「ブヒ!」
豚之助は思い切りぶつかって行った。かち上げで相手の状態を起こそうとするも、青龍丸に低く潜り込まれ前廻しを取られる。ぐるんと一回転、豚之助は上手を取り相手を押し出そうとする。
「ブヒー!」だが青龍丸は俵に左足を掛けそれを堪えると、右足を豚之助の足に掛け、器用な足技にてバランスを崩した。「げ!」豚之助の巨体は土俵の真ん中に、倒れて行った。
「豚之助!!」
つづく
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