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193.『戦隊学園』制作スタジオ
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198 :3
2021/07/12(月) 22:18:55

夕刻。
七海は自室からの梯子をつたい、階下の佐奈の部屋にやってきた。

佐奈は机で原稿用紙と睨み合っていた。
下書きを何度も消して書き直したのだろう、紙は消しゴムの跡で真っ黒になっていた。
机の上には筆記具の他に、購買のおにぎりの包みが散乱している。

「おにぎり好きなの?」
「作業をしながら食べるのは、炊き込みご飯のおにぎりが一番効率いいって、公一くんが言ってたから。」
佐奈はブツブツと答えた。

「どうしてもバランスが取れない。」
「4つじゃね。五体(身体の五つの部分)のロボを作るなら、5体のロボにしたら?」

佐奈は七海をじろりと見た。
冷笑を浮かべて。
「笑えるじゃん。」

「まぁまぁ、ピリピリしないでよ社長。これでもどうぞ、オススメだよ。」
七海は缶コーヒーを机の上にトンと置いた。さっき自販機で買った物だ。
「コーヒー好きじゃないんだけどな。紅茶党だから。」
「そっか、メモっとこ。」
七海は卑屈な佐奈にイライラしつつも何とか自制を保ち、缶のタブをプシュと開ける。
「これは私が飲んじゃうね。」

佐奈はノートを開いた。
「とりあえずこれが仮の案。4体のロボが合体して、大きな1つのロボになる。デザインジャーの技術を盗んだものだから間違いない。七海さんが人型のロボ、うちが象、楓さんが蟻、公一くんが・・・」

「パクリだからダメなんじゃないの?」

佐奈はにっこり笑った。
「え、何?」

「デザインジャーのを真似たんじゃ、負けるか良くて同じにしかならないよ。勝ちにいくなら、全然違う、新しい物を作らなきゃ。」

佐奈はしばらく七海の目をじっと見つめていたが、笑顔のまま。
「買いますよ、喧嘩」
「喧嘩したいんじゃないよ。そもそもこれじゃ豚之助のロボが無いし、別の案の方がいいと思っただけ。」

「豚之助なんかにロボは必要ない!」
佐奈は机をバンと叩いた。
「とにかく、この案で何とか完成させるから――」
「あっごめぇん!」
七海はノートにコーヒーをぶちまけた。一面が茶色に汚れ、図案は読めないほどに霞んだ。
「何すんの!?」
「わざとじゃないよ、本当に手が滑って。」
「絶対わざとでしょ!!もうやめた!」
佐奈はノートをビリビリに破いた。

「出てってよ。」
「わかった。」
七海は立ち上がる。
「最後にこれだけは言わせて。」
「何?」

「ちゃんとお風呂入ってる?」

佐奈は5日間同じパジャマを着ていた。

「もう5日も缶詰じゃん。気晴らしに北寮の大浴場でも行ってみたら?広いお風呂で足を伸ばすのって、気持ちいい!夜11時以降にいくのがオススメ。その時間なら誰も居ないから、1人でくつろげるよ。」

佐奈は返答しなかった。
「そんだけ。」
七海は梯子を上がって行った。

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