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193.『戦隊学園』制作スタジオ
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2021/07/19(月) 20:20:48

魔法クラス担任の木村は40歳くらいの女教師。
出席を取った後、こう言った。
「本日は文学クラスの村田先生をお呼びして、魔法と戦隊の関わりについての講義をしてもらおうと思います。」
木村は教室の一番後ろにパイプ椅子を置き座るとスマホをいじり始めた。これで給料がもらえるとは馬鹿馬鹿しい。

そして村田ときたら、七海が一番苦手としている老教師だった。
村田は亀のようにのろのろ入室すると、お経のような講義を始める。
「・・・魔法を使う戦隊として最も有名なものは、2005年の天功戦隊ゴマジシャン、2021年のコミュニティガールズレンジャー・・・」

老教師は米粒ほどの文字を黒板にびっしりと敷き詰めた。
眼鏡を破壊された七海にとってそれを判読するのは、理不尽な縛りプレイの様なものだった。

「フィクス!フィクス!」
七海はメガネにタクトを突き付け修復魔法を唱えるも、何故か一向に直らない。
最早やる気も起きず、机に突っ伏し、今朝の奇妙な夢の続きを見ようと試みた。
しかしどういうことだろう。その奇妙さを記憶している一方、夢の内容は全く思い出せない。
すると後ろから背中をぽんと叩かれる。
振り向くと、木村が眼鏡を光らせて立っていた。

「七海ちゃん、授業が終わったら、先生の部屋に来なさい。」

「・・・はい。」

踏んだり蹴ったりだ。

2時間にも及ぶ非生産的な座学で尻がむず痒くなった休み時間、七海は木村のいる魔法クラス職員室へ向かう。
メガネをへし折られて授業についていけなくなったことを怒られるのだとしたらなんという不条理。
もしそうであれば先生の手抜き授業を糾弾して逆に泣きべそをかかせてやろうと、強い心持ちで扉をノックすると。

「は~い!入っていいよ!」
予想外にフレンドリィに声を掛けられた。
七海は面喰いつつも「失礼します」と入室する。喫茶店のようなお洒落な部屋で、木村はお茶をたしなんでいた。

「座っていいですよ。」
七海は木村の向かいの椅子に腰かける。
「面談か何かですか?」
「あっ、緊張しないでください~!どうぞ・・・」
木村はお茶を勧めるが、七海は首を振ってノーサンキューと答える。
「早く用を言って下さい。言っとくけど、今日の授業は、メガネが壊されたから聞けなかったんです。そもそもあんな授業って無意味。実践をすべきです!教室は窮屈だって言った先生がいたけど・・・。」

「志布羅一郎ですね。」

七海はドキッとした。
自分をこの学園にいざなってくれた志布羅一郎先生。その名前を他人の口から聞くのは、とても久し振りな気がした。

「メガネを見してみなさい。」
「え?」
「いいから。」

七海は無残な姿になったメガネを机の上に乗せる。
「魔力に依って破壊されたものですね。通常の修復魔法では、どうにもなりません。」
木村はすらりと長い指を向け、こう唱えた。
「呪詛返しハルカゼ。」
ひゅぅっと風が吹き、メガネは元通りに修復された。
「あ・・・」
七海はメガネを掛ける。木村の顔が鮮明に見えた。

「ありがとうございます!」

今までぼんやりとしか見えていなかった室内をきょろきょろと見渡す。
すると窓の上に、音楽室のヴェートーヴェンのように肖像画が飾られているのが目に入った。違うのはそこに描かれているのが女性と言う点だ。
七海はつい思ったことを口にしてしまった。

「――似ている。」

額縁の中の女性は七海ほどではないが肌が白く、やや異質な雰囲気を醸し出していた。
木村は言った。
「有名な魔法戦隊の司令官をしていた魔女、ユキリエールさんです。」

異質な雰囲気、それは既視感であろうか。

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