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193.『戦隊学園』制作スタジオ
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2021/05/23(日) 00:00:05
教室に現れたのは先生ではなかった。
「挨拶はどうした!オラよォ!!」
グラサンを掛けた巨漢の上級生が入室した。それが先生でなく生徒だとわかるのは、その学ランからである。
生徒たちはビビりながらも挨拶する。
「よ、」「よろしくお願いします!」「よろしくお願いします。」
巨漢はフン、と鼻を鳴らす。さらにそれに続いて、長身痩躯の上級生も入って来た。こちらもグラサンを掛けている。
痩せ型の方が言う。
「あんまビビらせてやんなよ赤鵬。おいお前ら、夜は新歓だからな~、ノミニケーションで、仲良くやろうや。」
「まだ16なんだけどな。あ、私以外は15かも」
「あん?」
巨漢が私を睨む。
「なんか言ったか。」
つい口を滑らせてしまったわけでは無い。変だと思ったことは言う、私の主義だ。
「先生はまだですか?」
「話すり替えんじゃねーよ!俺が思うに、お前は俺たちの挨拶が、気に入らなかったみてぇだが。式でしゃしゃってたやつだよな?白髪の小娘が。」
後ろの席で、楓がガタンと立ち上がった。
「七海ちゃんはアルビノって障が・・・遺伝子疾患なんです!そんな言い方は無いと思います!」
「いいよ。私は実際、白髪だし。身体的特徴を挙げただけじゃ煽りとしても成立してないんだけどなあ。」
巨漢の顔は、みるみるうちに紅潮していく。
「私もあなたの外見的特徴を挙げます。デブ。」
巨漢は私の机に両腕をバンと振り降ろしたので危うく机が真っ二つに折れるところだった。
「ほほう、この赤鵬の正体が、格闘クラス3年首席、ヨコヅナレッドだと知らないようだな。」
ふんふんと犬のように鼻を鳴らし、教室を見渡して。
「よく見りゃあ例年にも増して望み薄そうな奴らばかりじゃねーか。俺は校長と違って綺麗事は言わねぇ。戦隊を甘く見るな。戦隊は即ち戦闘部隊だ!ここをそこらの高校と同じと思ってるんなら、帰れ!青春してぇ奴らはお隣の聖キュア学院にでも行くこった。3年間で待ち受けるのは訓練と、修練と、鍛錬だ!今は500居る同級生が2年に上がる頃には半分が落伍しているだろう。3年も然りだ。俺はオメーらが退学しようが逃亡しようが屁とも思わねえ。ついてこれる奴だけついてくりゃいい。ここはそういう所だ。」
「まずは1人、しごきに堪えられずに脱落だ。待った無し!」
巨漢は瞬時に赤の戦士に変身を決めた。黒い廻しが目立っている。
「東ィ~ヨコヅナレッド。」
数歩後退すると低く屈み、立ち合いの姿勢を取る。
「ハッキヨイ!」
関取のぶつかり合いはダンプトラックの激突のようなものだと、本か何かで読んだことがある。
私は逃れようとするが、机の脚にもつれてずっこけた。
「七海ちゃん!」
楓が私の前に立ち塞がった。
「用もないのに席を立つんじゃねえ!」
もろに喰らって。
「きゃあ!」
楓は大きく吹き飛ばされ、後ろの机にぶつかり倒れた。ガタン!という大きな音。
「ぶつかり稽古だ有難く思え」
次の瞬間。
巨漢は苦痛に顔を歪めていた。
私は左手で太い首を掴み、その図体を軽々と宙に持ち上げていた。
「ぐぅ・・・!」
巨漢は口をパクパクさせ声を振り絞る。
「・・・は・・な・・・せ・・・!ぐ・・・る・・じ・・・・・」
私はパッと手を離す。巨漢は床に崩れ落ちる。
「よせ!上級生に手を出すと、退学になるぞ!」
何か喚いている。だが私の心には響かない。
「友達に傷をつけるのが、正義の味方のやること?」
私は両手を前に突き出した。破裂音と共に炎が噴き出し、巨漢は甲高い悲鳴を上げながら黒板に激突した。メキメキとすごい音を立て黒板が落下し、巨漢は下敷きになった。
呆然とするクラスメイト達をよそに、私は早歩きで楓の元に寄る。
「・・・痛くない?」
「大丈夫。ありがと!」
私の手につかまって、楓は立ち上がった。
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