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193.『戦隊学園』制作スタジオ
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2021/05/23(日) 00:02:29
「おい何してくれてんだ小娘~!退学だ!退学だぞ!」
巨漢の味方だった痩せ型の生徒が喚き散らす。
すると教室の外から声がした。
「なんだ今のは!」
廊下に居たのは、精悍な顔立ち、逞しい体つきの若い男性教師だった。
燕尾服のようなものを着ている。
「ほうほう、そこで伸びているのは赤鵬くん。」
大の字に倒れぴくりとも動かない巨漢。痩せ型は真っ青になって、口を開けたまま黙っている。
先生は教室に入ると指揮棒のようなものを振り上げた。
「初日から新入生いじめとは感心しないね。」
「あ・・・その・・・」
「しばらく休学だ。Parade Rest!」
呪文のように軽やかな英語、先生は指揮棒をひゅんと上げる。痩せ型はぴしっと気をつけの姿勢のまま固まり、棒のようにバタンと倒れた。
「すまない。こういう連中ばかりではないんだここは。ただ新入生が来ると、ちょっとちょっかいを出したくなるんだよ。」
先生は私に声を掛けた。怒るわけでも、心配するわけでもなく。
「見事な能力だ。」
そして今度はクラス全体にこう言った。
「文学クラス担任・志布羅一郎(しふ らいちろう)だ。戦隊学園へようこそ!本日は文学/生物クラスの合同オリエンテーションを担当する。」
いささか唐突だった。
先生は教室を横断すると、窓側にある扉をバンと開けた。教室に風が吹き込む。
外には上へ続く螺旋の階段があった。
先生は生徒たちも来るようにと腕を振る。
「戦隊になるならまずは変身だ。ついて来い!教室では窮屈だ!」
「面白そ!いこう七海ちゃん!」
「うん!」
私は楓と共に先生に続く。
2つのクラスの100人近い生徒たちが先生について、ぞろぞろと階段を登り始めた。
楓が先生に話しかける。
「先生、ここでは好きに戦隊ユニットを組んでいいんですよね?」
「そうだ。変身さえ覚えてしまえば、あとは自由に好きな人とチームを組んでいい。3人でも、5人でも、2人でもいい。」
楓は意味ありげに私の方をちらりと見た。
「志布先生、お初にお目にかかります!」
1人の男子生徒が急ぎ足で階段を駆け上がった。
「天堂茂です、名前くらいはご存じでしょうが。先生、変身よりも先に、自己紹介や基礎テストなどはしないのでしょうか?」
「何あいつ!先生の前ではあの態度!」と、楓。
「これだけの人数が一斉に自己紹介して覚えられると思うかい?私は実践を通して生徒の名前と顔、能力を覚えるようにしている。それよりもまずは、君たちが私を知るのが先だ。私は1人だけ目立とうとするやつが嫌いだ。戦隊は個人競技ではないからね。」
天堂茂は黙りこくった。
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