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193.『戦隊学園』制作スタジオ
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2021/06/04(金) 22:47:56

寝室に戻る。


ふすまを開けると私はゾッとして硬直した。

薄暗い部屋、畳に敷かれた布団。
その上では女がうつ伏せでスマホをいじり、脚をブラブラさしていた。

「ねえ、そこ私の布団なんだけど。」

女はこちらを見た。
「よくね?」
「どいて。寝るから。」
私は女をどかせようとする。しかし相手の方が先に手を出し、私の手首を掴んだ。
「そんなに楽しみなのかな?」
彼女は私の1つ年上の先輩であり、この学生寮のルームメイトである。
「離してくださいミドリ先輩。」
私は手を引き抜こうとするも凄い力で掴まれ痛い。

「素直に言っていいんだよ?明日が楽しみだから。早く寝たいから、ウザ絡みすんなって。」

面倒くさい。
でも正直に言う方が得策だろう。

「明日がどうとか関係なく、夜中まで動画見てるのは非常識だと思います。しかも大音量で。ちっとも眠れないです。あと痛いから早く離して。」

「わーざーとぉですぅー!!」
ミドリは鼻の穴を膨らませて笑った。
「うちは何度もLR(LEGEND RANGER)落とされてんのに、あんたは入学初日に決まるなんて――ねぇどんな手を使ったの?お金?それともあの変人好きの先生に、身体で払ったのかな?」

私は衝動的に腕を振り払った。
「先生をそんなふうに言わないでください。」

「わぁ怖~い。好きな男のために必死だね?でもさ知ってる?志布羅一郎という男を。」
ミドリはゲス笑いすると、私の目鼻の先にスマホを突き付けた。

私は眉間にしわを寄せて眩しい画面を見た。
ぼやけている上に遠目でわかりづらいが、男性教師が女子生徒と人目をはばかって校舎裏に居るのを上階から隠し撮りした、そんな写真に見えた。

「これうちの体育館なんだよね。」と、ミドリ。
「4年前、それに去年、それぞれ教え子の女に手を出してる。ちょぉーっと、左巻きの子ばかりを狙ってね。」
ミドリは指をくるくる回転させて小馬鹿にする。
「まさか・・・!」
確かに写真の教師は、志布羅一郎の背格好に近かった。

「これはうちがこっそり撮ったやつ。彼、校長のお気に入りだからどちらも無かったことにされたけどね・・・あんたもその1人・・・かもね。」
ミドリはしてやったりの表情だ。

私は相手の顔に掴みかかった。

「人でなし!!」
ミドリは「変身!」と叫ぶとミドリ色の戦士となり後ろにステップした。
「先輩に手を出したら、退学――」
ミドリは何か小さな道具を取り出す。メタルの持ち手に、鋭い針の付いた武器。
「マイナスドライバー!」
私は間一髪で左にかわす。反応が遅れれば私の右肩に針が貫通していただろう。

「でもさ、後輩をしごくのはおっけいなんだよねぇ。つまりうちはあんたを半殺しに出来る!あんたはやり返そうもんなら、校則違反で退学となる!単純明快!!」

ミドリはマイナスドライバーをひゅんひゅんと突いて攻撃する。
私は転がるように避ける。「そこ!」ドライバーが突き下ろされ、ドスッという音と共に畳に突き刺さった。
私は枕元のガクセイ証を手に取り、
「変身。」
白の戦士となる。
「やり返すのかな?」
「上等です。」

「プラスマイナス!!」
ミドリは両の手に武器を構え同時に突いた。
「ぎゃう!!!」
私はけだもののような声を出して。
その針を手のひらで受け止めた。
「!!?」
針は2本とも、ポッキリと折れていた。

「その程度だから留年して今年も1年生なんですよ、ミドリ“先輩”――」

ミドリは私と同級生なのだ。

ミドリは一心不乱に、私に飛び掛かった。
「なめんなよおおおおお!!!」

「针!」

まるで、ハリセンボン。
私は体中から棘を出した奇怪な格好になった。ミドリは串刺しになり甲高い悲鳴を上げ、倒れ、床を転げまわった。

「いだああああああああい!!!!」

「同級生じゃその校則は適用されませんし、そもそも、後輩に負けたなんて誰にも言えませんよね。ではおやすみなさい。」

私は横になると、頭から布団を被った。
運動したので今度こそよく眠れそうだ。

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