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193.『戦隊学園』制作スタジオ
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2021/06/04(金) 22:53:39
早朝5時――
私は音の立たぬように扉を開け、ひっそりと部屋を抜け出す。
本日は土曜日。明後日からの本格的な授業に備えて、ほとんどの生徒はまだ寝ている頃だ。
靴下でペタペタと廊下を歩き、突き当りの下駄箱に到着。自分のスニーカーを取り出し、しゃがみ込んで履く。
入り口の自動ドアは電源が切られているようで、私が傍に立っても開かない。
私はガラス戸を自力で横に引いて開け、学生寮の外に出た。
早朝の戦隊学園はすっぽりと霞に覆われていた。
てくてくと道を歩いていくと、ランニングをしている2、3人の生徒とすれ違った。自主練とは偉いものだ。
校庭脇のトイレを抜けると赤い石像が目に入った。
「誰なんだろ。」
よくわからないが由緒ありそうな戦士たちの像が、10mおきに5つ置かれていた。
「赤・青・黄・緑・ピンク。」
私はその横を通るたびに色を口に出した。誰なのかは台座の説明書きを見ればわかっただろうが、読む気も起きず、素通りした。
やがて私は東門に辿り着いた。
水門のように大きくて威圧的な正門とは違い、東門は実にこぢんまりとしていた。
民家の勝手口ほどの大きさしかない木の門。背の高い男性なら頭をぶつけてしまいそうだ。
「こっそり出るにはうってつけ」
門の傍には5人の大人が立っていた。
「おはよう!」
1人は志布羅一郎だ。燕尾服を着ている。
「おはようございます!」
私は明瞭に発音した。
「今何時かわかってるのか?2分遅刻だぞ!チーム戦は1分1秒が運命を決めると習わなかったのか?」
こう告げたのは青い蝶ネクタイを付けた男性教師。
「・・・授業はまだ始まっていないか。このへんは全クラス必修の“戦隊体術基礎”で叩き込んでやるからな。」
彼、つまりレジェンドブルーは早口でそう言った。
「ごめんなさい。学園がこんなに広いとは知らなくて。校庭をぐるーっとを迂回してきたんですけど。」
「言い訳はいい。その恰好は何だ?」
楽団のような正装をしている5人。
それに比べて私は水色のパーカーを頭からすっぽりとかぶり、ポケットに手を突っ込んでいた。
しかもサングラスをかけて。
教師陣からすれば私は、柄が悪く礼儀をわきまえない、非礼な生徒に見えただろう。
「問題ない。」
と、志布羅一郎。
「出立だ。」
彼が指揮棒を上げると、ガコンと門が開く。
ピンク・緑・黄・青の順で身をかがめて素早く門を出る。
「君もだ。」
先生が私を見る。
「先生。」
私は門を出る際に、1つだけ訊こうとした。
「何だ。」
――先生が生徒に手を出したという、あの噂――
「やっぱり何でもないです。」
私は門をくぐった。
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