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212.小さな殺し屋さん
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98 :ねむねむ
2022/01/24(月) 21:09:54

No.8 悲劇のはじまり

山本は一人不気味に嗤う。
だって仕方がないよね、と。

「君が、僕を殺そうとしたから、いけないんだよ。」

わからないとでも思ったのかなぁ、とおかしそうに嗤う。

「君が最後に仕上げとして手を加えたのは……
 ゲームの内容や機能とかじゃなくて、爆弾なんだから。」

にやりとわらう山本。彼は知っていた。
野村が、山本を殺そうと、最後に念のためチェックしてほしいと渡してきたゲーム機に爆弾を仕込んでいたことを。
だから山本は、ゲームが現実に反映されるようにゲームを作り替えた。
そうすれば、TRUE ENDを迎えれば必ず、プレイヤーは一番最初に死ぬから。
そして、野村は制作者であるため、ゲームのストーリーでの正しい選択肢を知っている。
よって、誰よりも早くTRUE ENDを迎えるのは、野村の可能性が高い。
そう考え、山本は細工を施したのだ。
なぜ野村は山本を殺そうとしたのか?
「君は、好きだったんだよね。『彼女自身』が。」
そう、野村は彼女の『哀れな姿』が好きだったのではなく、ただ『彼女』が好きだったのだ。
普通の恋愛感情を、彼女に抱いていたのだ。
山本は、彼女の母や父を洗脳し、彼らが彼女を愛さないようにした。
要するに、彼女を追い詰め、殺したも同然である。
だから、野村は山本を恨んだ。憎んだ。
好きな人を殺されたのだ。当たり前といえば、当たり前なのかもしれない。
それをせっかく忘れ去ろうとしていたのに、いきなり会おうとか言われて再会してゲームを作ろうなどと言われたら、誰だってはらわたが煮えくり返る。
では、なぜ山本は彼女を追い詰めたのか。
洗脳など、面倒くさいことをしてまで。
それは愚問である。
「だって、美しいだろう?すべては、芸術のため。
 そのためなら、僕はあらゆる努力を惜しまない。」
ふふふ、と嗤う。
そう、彼は狂っているのだ。
25年前のあの事件よりも、もっと、ずっと、ずっと前から。
「さぁて、物語のはじまりだ。
 野村君は気付かなかっただろうなぁ、『俺』が婿入りという形で、結婚しているだなんて。」
あはははははは!!!
腹を抱え、嗤いだす。
「最後まで俺のこと、山本って呼んでいたなぁ……今はもう、山本じゃないのに。
 『僕』はとっくの昔に『俺』になったんだから。」
山本がゲームを作ることを考え出したのは、19年前だ。
くくく、と嗤う。
「俺は今、警察官だ。
 今日は、俺と妻が婚姻届けを出す日……つまり、妻が死ぬ日。
 そう、俺は、あのゲームの主役さ!
 野村、気の毒だなぁ……お前を殺す気はなかった。
 お前が俺を殺そうとさえしなければ、今お前は、愛する妻を持って、婿入りして、”坂本”の役をやっていたっていうのに……。
最高の悲劇を間近で見て、演じられたのに……
アハハハハハハハハ!!!!!!
ざまあみやがれ!!!!!」
高らかに勝利を叫ぶ彼は、気づかなかった。
背後に刃物を持って忍び寄る、ところどころ赤に染まった白いパーカーを着た金髪の少女の姿に。

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