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212.小さな殺し屋さん
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99 :ねむねむ
2022/01/24(月) 21:10:24
真っ赤な鮮血が、宙を舞った。
どしゃ、と山本は崩れ落ちる。
薄れゆく意識の中、彼はにっこりと嗤っている野村を見た気がした。
「保険って、かけておくべきだよね。」
そういうことか……山本は全てを理解した。
野村がゲームに仕掛けたものは、1つではなかった。
そう、野村は、言ったのだ。
「最後の仕上げ、『少し』俺に手を加えさせてくれ。」
と。1つだけしか手を加えないとは言ってなかった。
野村の『少し』は、一体どれくらいだったのだろうか。
ひとつは、山本に手渡したゲームに、爆弾を。
ひとつは、試作品に、”もし野村輝樹が死んだら、少女は山本を殺す”と。
試作品は、いつでも問題を見つけられるようにしておこうと、ずっと電源をONにしていた。つまり、まだプレイ中と認識される。よって、試作品に書いたものも、現実世界に反映される。
そして、山本は死んだ。
山本のブログは、『TRUE ENDを迎えてはならない』という投稿を最後に、ぱったりと途絶えた。山本が死んだ後に起こったことで、山本が知ることはなかったが……
野村は、こうも書いていた。
“少女は、もし山本を殺したら、自殺する。”
少女の持つ刃が、彼女の喉を切り裂いた。
少女は、ロボットである。山本が作り出した。
ただ、野村を殺すためだけに。
現実世界に、悲劇を作り出すために。
ゲームが現実になるとは、そういうことだ。
山本はかつて、こう言ったことがある。
「みんな、世の中はクソゲーって言うだろう?
だから、悲劇の名作に変えてあげたんだ。この世界をね。
これでクソゲーじゃなくなった。だから、みんな悲しむわけがないじゃないか。」
彼は、人を殺すことがなぜいけないのか、それがさっぱりわからなかった。
感情が欠落した人間だった。
鮮血は飛び散らない。
ロボットの少女は、壊れる寸前に、もう一つ、野村が書いたプログラムを実行した。
“もし少女が自殺したら、少女は幸せそうに笑って目を閉じる。”
あどけない笑顔で、少女は永遠の眠りについた。
少女は、ロボットである。
だが、私は感情を持っていると主張するかの如く、人間らしい、だがどこか寂しいような、あの事件の日の彼女と似た微笑みを顔に宿し、それきり、動くことはなかった。
悲劇は、まだ始まったばかりだ。
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