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250.ネット小説相談所・二
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18 :樹暁
2022/01/30(日) 12:41:09
近日(一年以内)に公開予定のゲラフィ掲載小説『箱庭のLABYRINTH』のプロローグです。後に細かい修正があるかもしれませんが、大筋はこれで決定しています。感想を貰えたら嬉しいです。
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『箱庭のLABYRINTH』
プロローグ
どこまでも続く灰色の地面。それとの境目が何となくわかるくらいの、地面と同じような色合いの空。雲なんかは見当たらず、光源であるはずの太陽もまた、見当たらなかった。空間それ自体にぼんやりと霞がかかっていて、視界はいいとは言えない。ただわかるのは、色彩を失った巨大な木が佇んでいることだけだった。
その木の根元に、ちょこんと座り込む影が一つ。腰までとどく金髪をはらりと垂らし、長いまつ毛に縁取られた目は閉じられている。黄を基調としたエプロンドレスはしわが寄り、けれどくしゃくしゃにはなっていなかった。
「アリス、アリス、起きてください」
そんなアリスに近づく白ウサギが一羽。目が痛むほど鮮やかなピンクのチョッキを身につけて、首の毛に埋もれた緑の蝶ネクタイをした、奇怪な格好の白ウサギだ。彼はチラチラと金の時計を気にしながら、ややまくしたてるようにアリスを急かす。
「アリス、起きてください。貴女の順番が回ってきたのですよ」
アリスの瞼が震え、ゆっくりと水晶のような真っ青な瞳が露になった。くりっとした可愛らしい目はしばらく虚ろに色を落としていたが、やがて光を宿し白ウサギを見た。
「順番?」
白ウサギの言葉を理解出来なかったアリスは、言葉の意味を求めてそう聞き返したが、白ウサギはアリスが起きたことを確認するなり走り去ってしまった。
「嗚呼、忙しい忙しい」
そう言って駆ける白ウサギの姿は灰色の大地を覆う霧に埋もれ、どんどん見えなくなってしまう。
「待って!」
アリスは白ウサギと親しい訳では無い。白ウサギはたまにアリスの目の前に現れて記憶に残らないようなことを言ってすぐに去ってしまう。追いかける理由なんてない。今回もいつもと同じように、ただアリスに訳の分からないことを告げに来ただけなのかもしれない。
それでもアリスは、何故か白ウサギを追いかけなければならないという思考に囚われた。立ち上がって白ウサギが向かったであろう方向へ走る。
「ウサギさーん?」
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