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253.バカセカ番外編スレ
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100 :ぶたの丸焼き
2022/12/10(土) 19:38:58
最初にちょっとしたアクシデントはあったけど、ここまでは理想通りだ。わたしはやっとバケガクの敷地内に入ることが出来た。
そのときにはすっかり生徒たちは登校し切っていたらしく、周りに誰もいなかった。遠くから聞こえる鐘の音が、やけに空々しく感じたことが、不思議と記憶に焼印として残っている。
『君はどこから来たんだい?』
『[ナームンフォンギ]から来ました』
案内状を送ったのは他でもない学園長なんだから、そんなこと聞かなくてもわかるでしょうに。あ、あれか。会話で緊張をほぐそうとしているのか。それには感謝する。教師らしいとこあるじゃん。
別に緊張なんて、してないけどね。
『へえ。随分遠くから来たんだね』
『そうなんですか?』
『ああ。大陸を一つ越えただろう?』
『そうだっけ?』
学園長は苦笑いをした。
仕方ないでしょ。通ってきた道なんて地理的には覚えてないって。
『これから学園長室に来てもらう。そこで手続きのための書類に色々記入をして欲しい。親の同意が無くても問題ないから、心配はしなくていい』
手続きか。面倒臭そうだな。それでも。それで花園日向様に会えるのなら。
自分の望みを叶えるためには時には苦労も必要だ。耐えられる。おっとよだれが。
『入学は新学期からだとして、寮には住めるんですか?』
手続きのことよりもそっちの方が気になる。今のわたしは文化的な生活に不可欠な衣食住が全く補償されていない。服は数十日同じ服を着っぱなし。臭いは風魔法で誤魔化しているけどそろそろ厳しくなってきた、そのくらいには酷くなっている。洗濯出来るような綺麗な川も湖もすっかり少なくなっちゃってたからあんまり洗えなかったんだよね。食事も栄養バランスなんて気にしていられない程安定していない。住む場所だって、最近は野宿の連続だ。まあ、元々こんな感じの生活してたしあんまり苦痛ではないけど。でも補償されるのなら補償されたい。その方が便利だ。
気づかれないようによだれを拭い、濡れた袖を隠しながら尋ねると、学園長があっけらかんと言ってのける。
『ああ。そちらに関しても問題ないよ。安心しなさい。入寮についても手続きが必要だが、それが済めば即日で住めるし、その手続きは優先して進めれば今日中に終えられる』
ふむふむ、つまり全ての手続きは今日中に終わらない、と。学園長達の方でも確認とかがあるからかな。それとも『また増えたのか』。時代が進むごとに色々な必要事が増えて嫌になる。法律とか制度とか──どちらも同じようなものか──しがらみが増えて複雑化して。どんどん生きづらくなる。成程それはここでも同じなのね。
……んん、他にはどんなこと話したっけな。手続きもどんなこと書いたかそんなに覚えてない。あ、でも、あれだけはよく覚えてる。今思い出してもにやにやしちゃう。罪悪感が無いとは言わない。でもそれ以上に嬉しかった。仕方ないよね?
「おい、何ぼーっとしてんだ?」
突然蘭に肩を叩かれた。ハッとして窓に意識の焦点を合わせると、目の前に赤々とした大木が佇んでいた。
「まだ寝ぼけてるのか? もう着いた。降りるぞ」
馬車の中に人は殆ど残っていない。蘭は目的の馬車停に到着して他の皆が降りてもわたしが全然動かなかったから、心配? してくれて声を掛けたみたい。
「あはは。そうだね、寝ぼけてるのかも」
時間を確認すると八時二十分。あー! 駄目だ。日向に会えるどころか早歩きで行って朝礼に間に合うくらいだ。教室が遠いよ!! くぅっ、鏡だ、鏡が悪いんだ! あんな場所に鏡があるのがいけない! もう一つ早い馬車に乗れていたら速い馬車だからギリギリ間に合ってたかもなのに!!
「はいはい、ほら行くぞ」
地団駄を踏む勢いで自分と時計に憤っていると蘭がわたしの制服の襟を掴んだ。
「わわっ、暴力反対!」
「暴力じゃない!」
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