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253.バカセカ番外編スレ
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11 :やっきー
2022/04/01(金) 23:12:31
《日向視点》
何、ここ。
何処、と自分に問う前に、まずそう思った。
空間に違和感があった。目が見えないことは関係ない。私は目が見えなくとも不自由しない──元の世界に居る限りは。
何処、という疑問ははじめから無い。私がいま居る場所が異世界であることは意識が戻ったその時からわかっていた。ただ、どうしても『何』という疑問は残ったままだ。
とにかく違和感があった。空気の流れや臭い、魔法的な『何か』も感じる。いや、これは魔法なのだろうか。そうだとも違うとも断言出来ない。自信が持てない。
やめよう。思考に時間を浪費するのは無駄でしかない。まずすべきことがある。
「蘭」
呟いた。返事は無い。当然だ、周囲に蘭の気配がないのだから。私が蘭の気配を感じ取られないなんてことは、あってはならないことだ。でも、蘭もここに、このセカイにいるはずだ。そうでなければ蘭が居なくなったことに私が気づけなかった説明が出来ない。本来そんなことはありえない。
とにかく、蘭を探そう。焦らなくていい。きっと見つかる。探しに行かなきゃ、早く。
焦りと苛立ちを抑えるために深い深呼吸をしたあと、私は仮面を外した。知らない場所なら、念の為視覚情報も得られた方が良い。
視界に飛び込んで来た真っ白な景色に思わず目を細めた。空を見上げても、太陽やそれらしい光源はない。眩しいのは単に色のせいというだけか。
いくら行動に苦労しないとはいえ、仮面をつけていると息苦しさなんかは当然ある。私は微量の開放感に少しだけ苛立ちがおさまるのを感じた。
それから。
「……何」
言葉が通じるとは思えないけど、一応目の前の化け物に問いかけてみる。
『白』で埋め尽くされた空間に溶け込むように、あくまで自然にそれは居た。妙に角張った巨体。一見してわかる特徴はそれくらい。顔らしい場所に目や口のパーツらしいものはあるけど、ただの模様にも見える。毛むくじゃらというわけではなく、そもそも体毛が確認出来ない。体の構造が私の知っている種族のどれとも一致しない。生物でないなら、話は変わってくるけれど。
白い化け物は呻き声一つ上げずに、私に襲いかかって来た。
太い腕を重そうに持ち上げ、私に向かって振り下ろす。見た目通りの遅い動き。あまり警戒する必要は無さそうだ。
余裕をもって攻撃を避ける。バコンッ! と大きな音をたて、白い化け物の腕が白い壁に衝突した。途端に壁はガラガラと崩れ、広範囲に渡って瓦礫と化した。思っていたより、脆いんだな。
私のそばにある壁にも亀裂が走り、ボロボロと形を変えていく。すると何故か目眩がした。くら、と視界が歪むと同時に、頭痛もする。
不快。
壁に手をつこうとすると、その壁が無くなっている。足でどうにか体勢を維持し、白い化け物を睨んだ。
どうして急に目眩や頭痛がしたのかは知らないけど、さっき白い化け物が壁を壊したことが引き金なのは間違いないはず。状況から判断して、結論はそれに至る。
なら、不快の原因は、あいつだ。
取り除かなきゃ、『不快』の理由を。
面倒臭いのは、嫌いなんだ。
「早く、蘭を、探さなきゃ」
目の前の、あれは、邪魔だ。
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