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253.バカセカ番外編スレ
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16 :げらっち
2022/07/30(土) 01:11:30
━━━無知な神がおりました。
「アナタ様は宇宙のバグを消去し、この“世界”を再起動した。それは神の仕事だ。」
「その通りですよ!私がこの“世界”の神になったんですぅ!」
神界にて。
大きなぶたの「元」神様は、机を見下ろしていた。いつも世界を執筆している机だ。そこに乗っていたのは、小さな少女だった。いや、小さいというのは相対的な評価であり、一方的な概念だ。彼女は人間の子女としては平均的な大きさだったし、わたしがでかすぎるだけだ。そしてその少女は見かけ以上の力を持っている。
周りには多くの天使と悪魔が漂っている。もはや背景のようになっていたが、天使の1人が「冒涜だ!」と叫んだ。
たしかに冒涜だ。神への不敬であり、世界への背信だ。いや、そんなことはどうでもいい。わたしはむしろハッキリとものを言うやつは好きだ。
ぶたは語る。
「そうだとして、猫野瑠々。この役目が務まるのかい?この世界を綴っていくには我慢強くなくてはならないよ。途中で投げ出すようなそういう人は神にはなれない。」
そうだとも。世界はわたしがペンで白紙の上に生み出していく。〆切厳守、打ち切りなどもってのほかだ。
だが猫野瑠々はあざとく笑った。
「あなたがこれまで通りその仕事を続けてください!私は普通の人間として、普通に学校生活を送ります。世界をずっとROMってるほど暇じゃないのですし。」
そう言うと少女はくるりと背を向けた。
「はっ!」と一声、何も無い場所に両手を突き出すと、軽々と空間をこじ開けた。そして踵を返すこともせず、人間の住む場所に戻って行った。
「神様、何をもたもたしてゐるのです!」
先程ルルを冒涜だと糾弾した天使、プラスチックエンゼルがピポパポと叫んだ。わたしがプラスチックで作ったからそういう名前だ。手抜き作なので性別は無い。
「やつは神の名を剥奪し、しかも神様を利用し続ける気ですよ!ゐって私が始末しましょう!」
「始末する必要はないよ。」とぶた。「でもインデックスを作る必要があるね。任せるよ。わっしょいわっしょい。」
あれは手抜きだがそれなりに有能だ。少なくとも昼と夜の姉妹と違って状況判断能力に長けているから、無闇に破壊行為に及ぶことは無いだろう。
プラスチックエンゼルは「お任せあれゑ」と言って、空気の間隙を追い駆けて行った。
ぶたは、そろそろおなかがすいてきた。
はてさて世界とは何であろうか。
神の綴った小説だろうか。起承転結は作者の気まぐれに委ねられているのか?
広くて狭い箱庭だろうか。大きな存在が世界を奔放にし、そこで行われる小さな諍いや営みを観察して、健気なものだとほくそ笑んでいるのか?
それとも意味など無いのか?
木が地中に根を伸ばすように、生命が手当たり次第に膨満したものを世界と定義したのか?
ルルにはわからなかった。
そんなくだらぬ哲学を松葉杖にせねば生きられぬ老人とは違い、彼女は若く、活気に満ちていた。今ここにある世界を楽しんで生きていた。
だがそれは、千年生きた仙人にも導き出せぬ答だった。
何故なら全てが正解であり、全てが不正解だったからだ。◯であり同時に×であるということは、必ずしも矛盾しない。少なくとも四次元を超えた世界では。
世界はひとつではなかった。
CGRが世界の中心と思い込み、ルルが神のライセンスを得た世界、それとは別に、ここに世界があった。
それをセカイと名付けよう。
CGRの世界からしたら、常識の通じぬ場所であるに違いない。一度迷い込んだら、出られぬ樹海に違いない。
ルルはそこに迷い込もうとしていた。先に迷い込んだ者たちを追って。
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