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253.バカセカ番外編スレ
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17 :げらっち
2022/07/30(土) 01:17:29
中2の夏といえば、セミの声さえも賑やかな合唱に聞こえるそんな年頃。
ルルは汗だくになって学校に向かっていた。
「地獄ですぅ!」
プラスチックエンゼルはそれを尾行していた。
隠密行動は得意分野であった。何故ならプラスチックエンゼルは誰の印象にも残らない、そんな見た目をしていたからだ。軽装で標的の50mほど後を付けていく。
「しかし、あつゐですね。人間界の夏がこんなにも過酷だと知っておけばこんな役割は御免だったのに。神様が丹精込めて作った世界を我が物顔で征し、自然を破壊し地球を温暖化させる人間は、まったく、をろかしい。」
神の代数は、歴代アメリカ大統領の数よりは少なかったか。
ルルが神に就任したのは去年(2022年)の秋頃、同時に尾行を開始したため、プラスチックは既に1年近くルル監視の任に就いていることになる。
わかったことは、ルルは平々凡々な少女だということだった。顔は見立てでは中の下。プラスチックは作り物の顔なので中の中だが。
背は平均か少し大きい程度、痩せ型、髪は黒のボブで、肩を超えるとすぐに近所の美容院に行きカットしてもらう。その間は婦人向け雑誌を読むか寝ている。髪を切ると友人に「髪切った!?」と誰が見てもわかるようなことをわざわざ確認される。プラスチックは髪が伸びないので、そんな文化を不思議に思っていた。
CGRのタレとりんごが受験期間のため、CGRはほぼ活動休止中だった。
大きな敵も居なくなったので、怪人が出ても、ルルかキーが単独行動で敵を潰しに行くことが多かった。
ルルは親族が居ないので、CGRの基地でもあるキーの屋敷に住んでいた。プラスチックは同じ津板山にある、今は廃墟の「そららんのドールハウス」を拠点にし、ルルの生活を首尾よく追っていた。プラスチックが透視能力でキーの屋敷を見ると、ルルはBL本を読み耽っていることもあった。世俗的だ。
アレが神とは思えない。
兵派亜中等学校に到着した頃には、ルルの制服は汗でぐっしょりだった。すぐにシャワーを浴びて着替えたいがそうもいかない。
ルルは2-3教室に入った。扉を開けると冷房の吐息が吹きこぼれた。救われた。空調が調整されているということは、約束の相手はもう来ている。
「何してんの、遅刻じゃあああああ!!」
級友の須良弥吏(すらみり)が、ルルにチョップを喰らわした。ちょっとポチャッとしていて、髪をセンター分けにしている。
「めんご!暑くてミイラ化してたんですぅ!」
ルルはエアコンの真下に来ると風の当たる位置を探り当て、はたはたとシャツを浮かせ、冷風を流し込み、少しでも体をクールダウンさせようと無駄な努力をした。
弥吏が何か飲料の缶を出し、ルルの頬に押し当てた。本来なら冷たさで飛び退くのがベストリアクションなのだろうが、ルルの顔は灼熱だったため、その嫌がらせさえ爽快だった。
「ハハッ。るるち、これ飲む?」
ルルはその缶のラベルを読んだ。
「おしるるドリンク?」
「おしるるじゃなくて、おしるこドリンクじゃあああ!!冷たくておいしいぜぇぇぇ!!」
ルルは風変わりなおしるこドリンクを飲むと、机をつなげて、弥吏と共に夏休みの宿題を始めた。
弥吏の家は親が厳しく友人が入れない上、ルルが弥吏をキーの屋敷に呼ぶのも不自然なので、学校で勉強会をすることにしていたのだ。
プラスチックエンゼルは新校舎に潜んで、建物越しに2人を透視した。怪しい動きが無いかを見張る。逐一記録するほどの無いことと思いつつも、プラスチックは会話の内容を上司に報告した。
「神様、聞こゑますか。こちらプラスチック――」
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