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253.バカセカ番外編スレ
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18 :げらっち
2022/07/30(土) 01:20:53
勉強は、はかどらなかった。
弥吏はおしるこドリンクと同じ会社が開発したと思われるおしるこキャンディを机に広げていた。
袋買いするのはよほどの物好きだろうという、ゲテモノだった。
「るるち、知ってるー?」弥吏はノートに顔を落としたまま言った。
知ってる?と問われても、何のことかわからないので、知ってるとも知らないとも答えようがない。
「多分知らないと思う。」とルル。
「この学校で、前に自殺した生徒がいるらしーよ!保健の先生の情報。」
「ふぅん……」
ルルもノートに目を向けたまま曖昧な返答をした。
CGRでは様々な体験をした。戦争や殺戮もあった。不可思議なことも多々あった。自殺などありふれたことだ。
「と、いうわけで私はトイレ行って来る!戻るまでにQ4を解いていてくれたまえよ。」
「話に関連性が無いですぅ!」
弥吏は大声で笑いながら廊下を歩いて行った。
じきにその声も聞こえなくなり、静寂が訪れた。聞こえるのはエアコンが風を吐き出す音だけだ。それはまるで呼吸音のようだった。
弥吏は、なかなか戻らなかった。
10分が経過し、20分が経過した。Q4はとっくに解き終わっていた。
濡れたシャツもすっかり乾ききった頃、ルルは異変を感じた。遅すぎる。
もしかすると、あの妙なおしるこドリンクでお腹をこわしたのかもしれない。ゴキブリに驚いて転倒し、頭を打って動けないのかもしれない。
ルルは近くのトイレに行ってみることにした。
「み~いん?」
女子トイレに人は居なかった。全ての個室を開けて確かめた。
まさか男子トイレに行ってしまったということはあるまい。
「他の階かな……?」
ルルは念のため、校舎中の女子トイレを探した。ルルが弥吏を呼ぶ声が虚しく響いた。学校を一周し、大抵のトイレは見終わった。流石に体育館やプール、新校舎のトイレに行ったとは思えない。
「まさか入れ違い?」
ルルは教室に戻った。
ルルが出た時と全く同じ状態だった。エアコンはつけっぱなしだった。ルルのノートも弥吏のノートもそのままだ。荷物を置いて帰ってしまうとは考えにくい。時計の針だけがさっきと違っている。弥吏が居なくなって、もう50分近かった。ルルはLINEで弥吏に「今どこ?」とメッセージを送った。無料通話をかけたがつながらなかった。
ルルは、ゾッとした。
何か視線のようなものを感じ、身動きが取れなくなった。1人きりであることが急に心細く感じられた。ルルはわあと叫んで教室を飛び出した。エアコンの効いていない廊下のあたたかさが、ルルを少しだけホッとさせた。
これは神隠しではなかろうか。
オカルト好きのルルは、失踪事件の特集番組を見たこともあった。
神が気まぐれに、少女を隠してしまったとしか思えなかった。
いや、神は自分自身だ。
今までも、不可思議なことは多々あった。
魔法だってオカルトだ。
何者かが魔法をもってして、いたづらしているんだ。
世界で最も魔力の高い私が翻弄されるなどあってはならないことだ。
ルルはスマホだけを手に、廊下を歩いた。魔力を行使すれば級友を見つけられるはずだ。
それにしても、何故誰も居ないんだろう?
いつもは校庭で運動部が活動しているのに。生徒も先生も、1人も居ない。セミの鳴き声だけが遠くに聞こえている。
?
廊下の向こうが、ゆらいでいた。
ルルは、暑さで目がぼやけているのかと思った。だが違う、もっと奇怪なものだ。
しかし魔力は感じなかった。敵意も、殺気も、そこにはなかった。あるのはただの、ゆらぎなのだ。
ルルの耳元に、何かの声が囁いた。言葉が直接耳に注がれ、ワープロで脳に文字が打ち出されたようなクリアな伝達となった。
『きて。』
ルルは、ぐいと強い力で、何かに服を引っ張られた。次の瞬間ルルはそこから消えた。
「何だ!?」
プラスチックエンゼルは動揺した。遠目にルルが消えるのを確認した。先程も弥吏という少女を見失ったところだが、追跡対象まで見逃すことになるとは。プラスチックは背中から簡素な羽を生やし、床の上を滑るようにして飛び、別館から本館に行くと、ルルが消えた場所に急いだ。そしてゆらぎを見て取ると、すぐさまそこに突っ込んだ。
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