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253.バカセカ番外編スレ
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21 :げらっち
2022/07/30(土) 01:32:06
その少女を見た途端、ルルの目は潤んだ。
「リリ!?」
毛髪も、顔も手足も、雪のように真っ白な少女、猫野璃々(ねこのりり)の姿があった。
服も白かったため、雪世界の白うさぎのように世界に同化してしまいそうだ。青い瞳と、ほんのり赤い唇が表情を形成していた。この少女は大抵の場合、ムッとしている。
ルルはシャツの袖でササッと涙を拭くと、妹の元に駆け寄った。
「久しぶりー!」
ルルは手を差し出したが、リリは握手に応じなかった。そして、「久しぶりか。そう感じるんだ。」と淡泊に言った。
「何でここにいるの?リリは消えちゃったんじゃ……」
リリは、ルルと雪華の魔力が合わさってできた生命。魔法による受胎はとても大きな魔力が必要なため、リリが世界で唯一のケースだろう。その特殊な出生はリリに大きな障害も与えた。アルビノもそのひとつだ。
ルルにとってリリは同じ母から生まれた妹であると同時に、遺伝子を提供した娘なのだった。
リリは色素の欠乏した目でルルを睨めつけた。ルルとリリは、顔が全然似ていない。
「消えてない、ここにいる。私には久しぶりに感じない。さっき別れたばかりだと思うんだけど。私は消えて、遺伝子の姿に回帰して、いつかまっとうなカタチで、再びあなたの娘として生を受ける予定だった。でも“また”邪魔された。何かに引き込まれて、ここに来た。」
ルルは考えた。
ということは、2人は「同じ世界」の、「別の時間」から誘拐されたということか?
ルルはすがる。
「ここがどこかわかる?おそらく、誰かが魔法で作った仮想空間かなんかだと思うけど……」
「多分、大外れ。」とリリ。「仮想なんかじゃなくて、ここもれっきとした世界だと思う。世界とは違う、“セカイ”か。それに、このセカイの根幹に魔法は無い。何か他のもので生み出されている。そして、何か目的があって私たちを招いたんだと思う。」
「何でそんなことがわかん――」
リリはルルの顔から視線をそらし、遠い場所を見た。ルルもつられて視線をそちらにシフトする。
先程倒したエアコンが、校庭の隅に倒れていた。損傷は無いが、「倒された」ようだ。
エアコンから声が、音ではなく、情報として漏れた。
『――を――けて。』
エアコンの、元々薄かった体が透き通っていき、完全に消えた。
ルルはリリに向き直って言った。
「そうだ、助けてくれてありがとう。あの化け物、何だかわかる?敵のようでもあるし、敵じゃないようにも思えるし……」
リリは首を横に振った。「わからない」というレスポンスだ。
「早く元の世界に帰りたいから、まずはこの学校から出よう。白って大嫌い。」
リリは足早に、校門のほうに歩いて行った。ルルも戸惑いながらそれを追うことにした。
リリは、元・神様すなわち例のぶたによって急成長させられた経緯を持つ。背格好は高校生くらいで、ルルよりも大人びている。ルルはリリに従うのが最善策と考えた。
ふとルルは、スカートのポケットに、何か固いものがあることに気付いた。
手を突っ込んでみると、おしるこキャンディだった。失踪前の弥吏が「好きなだけ取って!」と在庫処分したため、ひと掴み取ったのだ。7つもある。貴重な食料になりそうだ。
ルルはリリの背中をポンと叩くと、そのうちの1つを差し出した。
「おなかすいてない?おしるる……じゃなくておしるこキャンディ!変な味だけど、食べてみて!糖分は大事ですよ!」
リリはいぶかしげな顔をしていたが、それを受け取り、包装を剥がすと、茶色い玉を口に押し込んだ。
「まず。」
リリは顔をしかめた。
「でも、ありがとね。実はおなかペコペコだったから。」
リリはちょっと笑った。ルルは嬉しくなって、自分も甘ったるいだけの飴玉を、口に放った。
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