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253.バカセカ番外編スレ
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27 :げらっち
2022/08/03(水) 16:30:20

私は、もう1組の「客人」に声を掛けた。

「ハーイ、霞月。」
「呼んだ?」
黒髪の少年が片手を上げて答える。この中では一番まともそうだ。
霞月とその相棒、奏芽が私のほうにやって来た。
なんとまあ、2人はあの禍々しいおしるこキャンディを舐めている。
「初めての味覚だ……これ、さっきルルちゃんがくれたんだよ。ありがとう。」と霞月。
私はちょっとイラっとした。
「何で私にお礼言うの?ルルと私は行動を共にしているだけで、志は共にしていないから。」
霞月はちょっと怯んだ顔をした。ああ、クレバーじゃないねリリ。ここでさざ波を立てても何も得はしないってわかってるのに。
「ていうかそんな飴よく舐めていられるね。私は不味いと思ったから噛み砕いたけど。」
霞月と奏芽は顔を見合わせて肩をすくめた。
喧嘩っ早くてせっかちなのは私の悪い癖だ。
「まあいいや。飴の話がしたくて呼んだんじゃない。ここを出るまでは一時的に協力するってことで良いんだよね?」
私より若干背の高い霞月は、うんと頷いた。
「ああ。ていうか一時的と言わずに、元の世界に戻ってからも友好関係を築きたいな、とかも思ってるんだけど……」

私は笑いを堪えた。
どいつもこいつも性善説ね。あの金髪の2人のみならず、あなたたちだって、他の世界から来た誰にも、心を開いてなんかいない癖に。
あなたたちも他人を利用しているだけだ。こっから出るために、なし崩し的に協力を要請しているだけだ。バラバラに動くより集団で動いた方が襲われにくいし、襲われたとしても助かりやすい、草食動物の本能と同じだ。良いよ。私もいっぱい利用するからね。

それにどのみち、ここから出たら、私は存在しなくなる。遺伝子の姿に帰納して、ふりだしに戻って、今度は魔法の彫像ではなく、雌雄の混合物として生み出され、着床するところからやり直す。
私はこの糞ッタレの人生をリセットさせるために、早くここから出たいんだ。すなわち消化試合だ。

茶髪の少女、奏芽はニコッと笑みを見せた。
「きっとここから出られるよ!」
きっと、か。曖昧な表現は嫌いなのだけど。


私は遠くに見えている、高い円錐を指さした。白い建造物は、白い背景に呑まれてしまいそうだった。
「当面はあそこを目指す、ってことでいいよね?」
「いいよ。確かにあの“四角錘”の建物は見るからに怪しいよね。」と霞月。
私はハッとして、霞月を見た。彼は、どうして急に見つめられたのかわからないという表情だ。

四角錘、か。

突如、誰かが後ろから、私の髪の毛に触れた。私は咄嗟にその手を掴み返し、バチンと凍らせた。
「いいやー!!」
ルルの腕がビキビキと氷結していき、彼女は地面に突っ伏した。
「何触ってんの?」
「き、綺麗な髪だと思っただけだよ……!」
「あら有難う。触る理由としてはいささか不足しているけど。次したら、五感のどれかを潰す。半永久的に。」

ルルは涙目になった。馴れ合いは嫌いだ。
私はルルから手を離すと、円錐の建物について尋ねた。
「あれ、どんな形に見える?」
「クリスマスツリー。」
「具象化しなくていい。抽象的な形状を聞いてる。」

ルルはしどろもどろ、
「えんすい。」
と。

やっぱり円錐だ。
霞月たちには四角錘に見えている。出身の世界が違うと、物の解釈も異なるということか?
金髪の2人にはどう見えてるんだろう。もしかして、三角錐かな。

私があそこを、この迷路のゴールと見ているのは、目立つからという理由だけではない。
あそこからは凄まじいイロを感じる。
「ヒカリ」とは真逆の、「ヤミ」というような、真っ黒なイロ。
黒いカラーを持つのは大抵、闇属性や病み属性、狂人に類するものだ。だが、あそこにある黒からは、邪悪は何ひとつ感じられなかった。
変だ。
闇ではない「黒色」は、存在するか?白い影が無いように、黒い光は存在しない。

「もしかして。」

もしかして、あれは単一のイロではないのかもしれない。
光の三原色の集合体は白だが、色の三原色の集合体は黒だ。色んなイロがグチャグチャに混ざって、黒く見えているのか?だとすればこのセカイは……

「まあいいや。」

まあいいや、ここから出られればそれでいい。
再びルルの娘として産まれるのは反吐が出るほど嫌だけど、もっとまともなカタチで生まれさえすれば、いくらでも「復讐」できるんだからね。

☆☆☆

蘭は、日向と共に、他の4人から離れると、真っ白いベンチに座った。日向もその隣に座る。
蘭は弁当を、2人の間に置いた。
「どうして受け取ったの」と、日向。
彼女の質問は疑問符の他にもいくつか言葉が抜けていたが、それがルルからの贈り物のことだと、蘭にはすぐにわかった。
「日向がしつこくつきまとわれるのは、いやだったからな。」
蘭は飴玉を、ペェッと吐き出した。

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