スレ一覧
┗
253.バカセカ番外編スレ
┗29
29 :やっきー
2022/08/08(月) 17:43:22
うるさいうるさい。自分に向けられた言葉ではないとわかっていても最早あいつらの声が耳に入るだけで煩わしい。耳を引きちぎって鼓膜を破ってしまいたい。どうせ再生するからそんなこと実際にはしないが。
「もしかしてあの子も蘭くん? とはぐれたんじゃないかな。あの子たち自身で判断して離れて行動するようには見えなかったし」
「なるほど。納得ですぅ」
私の意思を確認していないくせに私を理解したつもりになってる二人が鬱陶しくて仕方がない。いっそ殺してしまおうか。そんな、世間一般は物騒だと言いそうな考えが頭をよぎる。
いいかもしれないな。この不思議なセカイで罪を犯せば私は罪を自覚出来るかもしれない。あれほど焦がれた罪悪感とやらを知れるかもしれない。
理性なんてものはとうの昔に消えている。歪な思考を正す自分を探し出すことに失敗した私は既に汚れきった手にさらに罪を塗り重ねることに決めた。しかし私が思い描いた未来が実現されることはなかった。
再び私はめまいに襲われた。ぐるんと視界が回転して吐き気が込み上げてくる。足元がふらふらして立っていられない。ぐるぐる回る視界が気持ち悪い。もう回っていないのに気持ち悪い、気持ち悪い。
「大丈夫!?」
霞月の声がした。慌てた様子で近づいてくる足音。いつ私が助けを求めた。いらない、そんなの。
私は私を止めることはできなかった。私を止めたのは私以外のなにか――セカイだ。セカイはどうしても私たちを協力させたいらしい。なんのために。一体セカイは私たちに何を求めているの。
「ど、どうしたんですか? どこか痛いんですか?」
ルルが私に話しかける。見た目が子供だからある程度仕方ないとはいえ、気遣っているふりをして暗に自分の方が立場は上なんだと語りかけてくるようなこの声がとても嫌いだ。うるさいうるさいうるさいうるさい。
「うるさい」
私が言うと、ルルはとうとう怒りの感情の湧いてきたらしい。むっとした顔をして私に言う。
「心配してるのにその言い方はないんじゃないですか?」
「頼んでない」
私は一人で立ち上がった。
霞月も少なからず不快になっているようだ。でもこちらはまだ年上らしく振舞おうとしている雰囲気がある。
「きっと蘭くんと離れて不安なんだよ。日向ちゃん。僕たちも探すよ。だから一緒に来てくれないかな?」
「嫌」
助けなんて必要ない。この二人が増えたところで蘭を探す効率が上がるとも思えないし。
「そっか」
ついに霞月が突き放すような声を出した。長かった。これで一人で蘭を探せる。
二人は私の横を通って歩いていった。私も向こうに行きたいんだけどな。あっちには三角錐の建物がある。さっきの会話であの建物を目指すことになったし、あそこに行けば蘭に会えるはず。
仕方ない。二人の姿が見えなくなるまで待とう。
『だめ』
老若男女の声がした。そして隣には先に道を歩いていたはずの二人が呆然と立っていた。何してるの。
「い、いまのなに?」
「急に視界が歪んで……、気持ち悪い」
ルルと霞月は揃って青ざめた顔で口元を抑えていた。数分前の私だ。私に起こった現象が二人にも降り注いだんだ。
――どうしても、協力しないといけないのか。また分かれたとしてもセカイが強制的に引き合わせてくる。いつまでも拒み続けるのは不毛だ。それは理解できる。
仕方ない。
私が二人に声をかけようとしたとき。床に大きな亀裂が走った。バコッと床が陥没してそこから泥が噴き出す。いや、これは噴き出すと言うよりは這い出ると言った方が適切か。泥まみれの巨大な化け物が床からのそりと出てきた。やけに敵が多いな。
私はその巨体を見上げた。上から下まで粘性の高い泥らしき液体に包まれていて、全体の形は半円に近い半楕円。まるで標高が低い山みたいだ。横幅が道幅に収まりきっておらず、少々液体が両側の壁からこぼれている。元の世界にいたC級スライムに似てなくもないけど、こんな色も大きさも見たことがない。同じものとして見るのは賢明じゃないな。
ちらっと二人を見ると、表情からして戦うつもりがあるのがわかる。私の視線に気づかないままにルルが何かを触った。黒くて薄い直方体。六面のうち五面が赤色に染まっている。いや、あれは上からカバーをつけてるのか。なるほど。
「コミュニティアプリ起動!!」
ルルがそう叫ぶと、ルルの体から炎が噴き上げた。泥とは違って空気を突き刺すような力強い炎。魔法の核となる魂に赤色が見えた。へえ。
「炎の勇者!! ガールズレッド!!」
ルルを包む炎が晴れた。そこにいたのは全身を覆う赤いスーツを身につけたルルだった。あの端末が魔法具の代わりを果たしているのか。面白いな。
私や蘭ほどではないにしろ、ルルにも何か強い力を感じる。少し興味あるな。
[
返信][
編集]
[
管理事務所]