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253.バカセカ番外編スレ
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30 :げらっち
2022/08/10(水) 15:33:28
《ルル視点》
私は神だ。
可哀想な養子。みじめないじめられっ子。災厄のキャスストーン。そんな運命を切り抜けて、私は神の二つ名を得た。
それは当然の成り行きだった。私の魔力は大きすぎたから。
それもようやく調節できるようになった。コンロを捻って火力を弱められるようになった。
だから神の名は飾りに過ぎない。神の仕事は、あのぶたさんに任せてある。
ようやく私は、普通の学生になれた。それは神よりも欲する立場だった。
だがまた事件に巻き込まれた。普通になるのは、まだまだお預けだ。
「コミュニティアプリ起動!!」
私は咄嗟にそう叫んだ。いつもの癖で。
ここは「セカイ」だ。リリは恐らくカタカナで発音した。明確ではないがそんな気がした。それはつまり、私たちの住んでいた世界とは別ということだ。
ここがセカイであるならば、変身が成功するとは限らなかった。だが成功した。どの世界にあろうと、私は私だ。私の中の魔力は変わらない。
「炎の勇者!! ガールズレッド!!」
全身が炎に包まれ、血液が沸き上がる。心地のいい戦意。
さあるーちゃんのお時間ですよ。
「スーパースパイラルフレア!!」
私は赤いグラブを敵にかざし、魔法を唱えた。掌から炎が噴き出し、灰色の泥の塊にぐるぐると巻きつく。
「やれえ!!」
蛇が獲物を絞め殺すように、火の竜がバケモノを焼き尽くす――
「あれ?」
――ことはなかった。炎は掻き消え、小山程度の泥は、引っ込んだ。
エアコンを相手にした時と同じく、何の手応えも無い。なんだろう。
「ここは、セカイ。あなたの世界とは違うから、あなたは同じでも、あなたの行動の反応は変わってくる」
「え、ええ?」
私は声のした方を振り向いた。ひなたと呼ばれた金髪の少女の姿ある。
あの子があれほど長い文章を喋るとは思ってなかったから、ちょっとびっくり。でも確かにあの子の声だ。
「あの……なんて?」
私は尋ねた。だが返事は無かった。少女は私から興味を無くしたように、今度は地面を見ていた。あのバケモノが飛び出した亀裂は、綺麗に消えていた。
確かに気になることだけど、私を無視するのはどうなの?ねえ!マイペースにも程があるんじゃない?
……いけないいけない。年下の子相手に、大人げないよ、ルル。深呼吸!
「ルルちゃん、その姿は?」
続いて、霞月さんがそう言った。
私は年上の男子に対して使いがちな語調で言った。
「あ、見られちゃいましたか!ガールズレッドですぅ!私、元の世界では、CGRっていうヒーローとして戦ってたんですよ!!本当は秘密なんですけどね!」
私は魔法のマスクをずり下げ、口元だけ覆い隠すように変形させると、眼でニコっと微笑みかけた。
「僕もヒーローをしているけれど、変身はしない。すごいな……かっこいい。」
「えへ!」
「そういえば、スマホ持ってるんだ?」
霞月さんは、私の赤いキズナフォンをじろじろと見た。よくぶん投げるのでスマホケースは傷だらけだし、画面は指紋でべたべただ。こんなのを見られたら恥ずかしい。とりあえず私はササッと指紋だけでも拭き取り、彼に見せた。
「持ってますよー。霞月さんは?」
「家に置いて来ちゃったんだ。そうだ、リリちゃんと連絡取れないかな?奏芽も一緒に居るかもしれない。」
たしかにそうだ。リリも恐らくキズナフォンを持っている。でも肝心なことに。
「この世界にはWi-Fiが無いんですよね。」
私は思う。キューちゃんが居れば、電機魔法でWi-Fiを編み出すことなど容易だったのに。
すると突然、ズドンと突き刺すような音がして、地が割れた。バケモノの再来だ。会話中でもお構いなしだ。
先程と同じような濁流が噴き出した。ただし今回は細長く、何十メートルも高く立ち上がった。山というより間欠泉だ。
「よし、戦おう!」と霞月。「僕らの世界にも魔法は存在する。僕はその奇天烈な能力を授かった者だ。雷起こし!」
霞月は魔法を生み出し、投げつけた。何てシンプルなんだろう。
バシンと稲光が走り、泥の柱に穴を開けた。シンプルだけど、効いている。何で?私の魔法は通じなかったのに。
だがそれで倒したわけではない。
ドン、ドン、ドンと、あちこちから泥が湧き出してくる。「くっ!数が多い……!」と霞月。白い空が、灰色の泥で覆われる。私には何もできない。
「邪魔だな」
「え?」
ひなたが、バッと空に跳び上がった。
ひなたは宙で、何かをつかむようなジェスチャーをした。すると泥の柱たちは、ぐにゃっと束ねられた。ひなたがそれを引っ張るような動きをした。ドォンと、泥たちは全て引き抜かれた。民話「大きなカブ」のようだった。ひなたは泥の塊をどこかにポイ捨てし、降りてきた。泥の片鱗が雨のように落ちてきて、辺りは泥々になった。
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