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253.バカセカ番外編スレ
 ┗42

42 :げらっち
2022/09/11(日) 15:53:08

《ルル視点》

展開が早すぎて、ついていくのが精いっぱいだ。

変な世界をハシゴして、次はどこに辿り着くのかと思いきや、

「自分の世界」であった。

私は周りを見渡した。
私は、真理類町の住宅街の見知った道のド真ん中に立っていた。
まさか、全部夢だったのか。だがそのような都合の良い解釈はすぐに否定される。視界に金髪の少女が入った。
「ひなたさん!」
プァンとクラクションが鳴った。
「わあ!危ない!」
私はひなたを庇って、路肩に退避した。車は猛スピードで通り過ぎていった。
「しつけの悪い車ですぅ!歩行者優先ですよ!!」
私は走り去るテールランプに向けてあかんべぇをした。ひなたはそれを物珍しそうに見ていた。
恐らく、あれが何かもわからないのだろう。先程立ち寄った彼女の世界は、ファンタジー然としていて、機械は見当たらなかった。私は、親切心に、マウント取りを隠し味にして、ご丁寧に説明してあげた。
「あれは自動車ですよ。移動する時に使う乗り物です!」
ひなたは言う。「ほうきとか馬車みたいなものか。」
「そうです。他人を煽ったり店に突っ込んだりもできるんですよ!」
「へえ。」
折角ジョークを言ったのに、ひなたは無表情だ。つまらない。


暑い。そうだ、季節は夏だった。
だけどこの暑さは懐かしかった。やっと戻って来れた世界。


だがひなたは言った。
「ここは貴方の世界じゃない。ここも、作り物。」
「えぇ~?」私は素っ頓狂な声を出した。
「“セカイ”に戻らないと。そして蘭と合流しないと。」
「どうすればいいんですか?」と私。
「恐らく、ここにも“ボス”が存在する。それを倒せば出られると思う。」
「それじゃ、とりあえずCGRの仲間を探します。みんなが協力してくれるかもしれないので。来て!」
私はCGR基地のある、津板山に向けて歩き出す。
ひなたは後をついて来た。

ひなたの世界のボスは、真白という少女の体を乗っ取ったレヴィアタンという怪物がそれにあたるのだろう。
私は旧友の真白を思い出した。名前こそ同じだが、性格はまるで違った。
大石真白はしたたかだったが、あちらの真白は、弱弱しい裏面に、邪気を感じた。

☆☆☆

道中、日向は色々なものに興味を示した。
自販機、電柱、工事現場のパワーショベルとタイヤローラー、パラボラアンテナなどである。
日向にとってそれらは初めて見る物ばかりだった。壱世界の神より高次である彼女はそれらの存在も認知している。だが、日向という人間体として、直接それらを視認するのは初めてだった。精神よりも、新しいものを受容した目や脳という器官自体が、新鮮さにざわついた。
しかしそれは日向のデスマスクには投影されないので、ルルは彼女を相変わらず不愛想な世間知らずだと思っていただろう。

すれ違う人々は、不思議なものを見る目で日向を見た。日向はこの世界の人種には、殊に日本人には、滅多に見られないような容姿だったので当然だ。
日向の世界の人々は、彼女を恐れ、蔑視した。片方だけの白眼を忌み嫌った。
だが愚かな東洋人には、そんな風習も風評も存在しなかった。だから彼らは日向に、羨望の目を向けた。美しい金髪とオッドアイは、二次元の世界から飛び出してきたようなものだったから。事実他所の世界から来たのだが。
非常識な現代人は、日向の輝く風貌を写真に収めるべく、スマホのレンズを向けた。
マネージャー気取りのルルは「勝手に撮らないで下さい!」と彼らを追い払った。

「あれはルルが持っていたものと似てる」と日向。
ルルは微量うれしそうにした。今まで「豆腐にかすがい」だった会話が、相手の記憶に染み入っていたことが確かめられたからだ。
「そうですよ!あれもスマホです!私が持ってるのはキズナフォンっていう、CGR専用の機種なんですけどね!」
上機嫌なルルは、赤いキズナフォンを日向に渡した。
日向はそれを持ってみて、案外重いものだと思った。
「特別に貸してあげますよ!(_▫ □▫/)」
「それはなに」
「これは顔文字って言います!この世界では使いたいほーだいですよ!(⊃ Д)⊃≡゚ ゚」


テレビは、2人を追尾し、住宅街の屋根の上を移動していた。テレビから人間の足が生えているシュールな形状だ。
映像をアウトプットするはずのテレビが、何故か状況を撮影する役を買っていた。

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