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253.バカセカ番外編スレ
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50 :げらっち
2022/09/26(月) 17:08:59
蘭と日向は、リビングのような場所で、ソファに掛けてリリたちを待っていた。
その時蘭は気付いた。
「いつの間にか、あの2人への感情が変わっているな。」
「え?」と日向。
蘭はニヤついて言う。
「待つ義理なんて無かったのに。こうしてあいつらを待つくらいには、チームワークが生まれてるってことだ。」
「成程。」と日向。しかしその表情は、全く成程としていなかった。
それでも日向が少しリラックスしていると、蘭は感じ取っていた。
悪くないチームだ。
そこにリリとルルが入ってきた。
「お待たせ。じゃ、行こうか?」
4人は水場に向かって無言で歩く。
蘭は沈黙を苦とは思わなかった。彼は、日向もそうだろうと予想した。他の2人はどうか。性格からして、ルルはこの状況を気まずく思っているかもしれない。
それを緩和する目的などではなく、単純な疑念が、蘭がルルに話し掛ける動機となった。したがって、蘭がルルに話し掛けるという奇妙なことが起きた。
「そういえば、お前は“神”と呼ばれていたな。それはどういうことだ?」
愚直な質問であった。ルルはちょっとだけ驚いたような顔をした。
4人は足を止めなかったが、剣呑な時間が流れた。
やがてルルではなく、その隣を歩いていたリリが答えた。
「別に、隠すことでもないし答えたら?そのままの意味。」
ルルは「リリ!」と叫んだ。
リリは滔々と続けた。
「私たちの世界で、ルルは元々、神の道具だった。世界のバックアップを取るための魔石、キャスストーンという存在だった――それが自らの強大な魔力を駆使し、世界を作り変え、幾度にも重なる改変ののち、神よりも力を持ってしまって、半ば暴力的に、神の座を奪った。」
蘭は時折振り向いて、後ろを歩くリリの声を聞いていた。
日向は蘭の隣で前だけ向いて歩いていたが、おそらく耳は傾けていたろう。
「理解できた?」とリリ。「神がかりな話だし、馬鹿げているので、理解できなくても不思議じゃないけど。」
しかし蘭はそれを理解し、納得した。他所の世界でそのような下剋上があろうとも、有り得ない話ではない。
蘭はルルの姿を見た。この平凡な少女が、そのような神話を背負っていたとは。同情のような、愛着のような感情が、蘭の中に芽生えた。
するとルルは、にこりと笑った。
「……じゃあ次は、あなたたちの話をする番ですよ。」
ルルはきれいな人差し指を、蘭、そして日向に向けた。
「え?」と蘭。
「いや、別に無理に話さなくってもいいですけどね。知っているので。あなたたちも、“神”だってこと。」
その際の蘭は、激しく動揺していた。
どういうことだ?
ここにきて、日向は歩を止め、振り返った。
しかし日向の口から出たのは淡々とした言葉だった。
「着いたよ。」
4人のすぐ先に、水場があった。
蘭は言う。「日向、そんなこと言ってる場合じゃない。こいつらは――」
「スパイラルアイス!!」
リリの手から氷が飛んだ。それは蘭に直撃し、哀れ少年は、吹き飛んで、水の中に落ちた。
「水だけは――ぶがあ!!」
「蘭!!」
ここで、日向の思考はめまぐるしく動いた。
何だ?
蘭が危害を加えられた。蘭が!蘭が!!蘭が!!!蘭が!!!!蘭が!!!!!
日向にとって他のことはどうでもよかった。何が起きているか分析することは後回しだ。今すべきことは、蘭に攻撃する者を排除し、蘭の安全を確保すること、のみだ。
日向はリリに狙いを付けた。余裕があれば、手足をもいで、苦しめて殺すところだ。だが今はそんな余裕は無い。
最上級の魔法で、ケリをつける。
「【創造魔法】。」
日向は空間を壊した。
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