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253.バカセカ番外編スレ
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51 :げらっち
2022/09/26(月) 17:11:00

「お待たせ。じゃ、行こうか?」

私は、蘭、日向と合流した。ルルは私に殴打されたおなかをさすっている。
少々力を込め過ぎたか。ざまあない。あれくらいしないと、ルルは懲りない。

「その前に、知りたいことがある。」

私はギクリとした。今まで一度も無かったことが起きていた。
ひなたが私に話し掛けていた。

「あなたとルルの関係は何。」

直立するひなたの、左右で色の違う瞳の、視線の交錯する場所で、私はたじろいた。

それはいずれ、話さねばならぬことだった。
一時的とはいえ協力している中で、大きすぎる隠し事は、チームの瓦解を招く。
わかり合う気など毛頭ない。だが最低限の情報は明かす必要がある。お互いの手札がわからなければ、共闘できない。目隠ししてポーカーをするようなものだ。
しかし全てをバラす必要はない。あちらだって、ほとんど何も、手の内を明かしていないのだから。ほんの少しだけ、情報を与えればいい。

「私たちは、姉妹。似てないでしょ。ま、それだけ。」

私はそれで口を閉じた。喋り過ぎるとボロが出る。
どちらが姉でどちらが妹かも伏せた。肉体と精神の年齢から、私が姉に思われるかもしれない。まあどちらでも大差ないことだ。
だがひなたの追及はそれだけでは終わらなかった。

「それだけじゃない。」

うん、それだけじゃない。
私とルルは姉妹であると同時に 親子 でもある。
ひなたは目線を逸らさず、瞬きさえもせずに私を見ている。心の中を見透かされているようで、怖かった。
チラリと見ると、蘭も怪訝な顔をしていた。私の動揺が見えたか。何か言わないと、余計に怪しく思われてしまう。

「それだけじゃない。友達だよ~、友達!」

私は咄嗟に、柄でも無いことを言い、隣に居たルルと肩を組んだ。ルルはキョトンとしていた。
ああ、自分でやっていて気持ちが悪い……
こんな茶番も意味を成さず、ひなたは言った。


「あなたは、母殺しのパラドクス。」


私はフリーズした。自身の氷の魔力が、漏出し、体を囲ってしまったかのように。
ひなたは、私の、心の、洞窟に、踏み込んできた、
何故、その単語を。

ひなたは、足音も無く、私に近付いてきた。
そして口角を上げた。
不自然な表情の移り方だった。イラストの、差分のような、笑みだった。

「ふふっ リリ。あなたは生命による正規品では無い。ルルの魔力によって生まれた、欠陥品。母であるルルを殺し。救う。ためだけに生まされた。だからルルを憎んでいる。」


次の瞬間、私は日向に攻撃していた。恐怖からか、衝動からか、運命からか。

「ム魔法トキめき。」

ム魔法は、エレメントを介さず純粋な魔力を相手にぶつける。大味だが強い。どのくらい強いかというと、腕相撲でキックしていいくらいには強い。
闇魔術や光魔術より強い。だがそのム邪気な魔力の塊を、日向は片手で受け止めた。そして、握り潰した。

ひなたは唱えた。
「【創造魔法】。」

空間が崩れた。そして再構成されてゆく。真っ白い、地形の無い所。私はガクンと膝をついた。ひなたの背中が見える。殺らないと殺られる。私はキズナフォンを取り出す。「コミュニティアプリ起動。」だが、起動せず。「起動!!」叫んでも無駄だった。私の中の魔力が、具現化できない。知的障害が、私の思考をアウトプットできなくした時のように、魔法障害が、私の魔力を外に出せなくした。創造魔法の凄まじい魔力が、私に障害を負わせた!

「リリ!!」
私を呼ぶ懐かしき声が。

見ると、白の中、ルルが走ってくる。
「ルル!」私は助けを求める。だが、
カッと、光がルルに突っ込んだ。ルルの炎はちっぽけで、掻き消されてしまった。大きな大きな炎。まるで太陽のような。

「邪魔くせえ!」
蘭がルルを焼き尽くしたのだった。

ひなたが振り向いた。

「このセカイでは、神は、私たちだけで良い。」

さあまずいことになった。

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