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253.バカセカ番外編スレ
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52 :やっきー
2022/10/04(火) 19:39:35

《日向視点》
 
 創造と破壊は直結する。創造は破壊の上に成り立ち、破壊は創造の上に成り立つ。創造とは零から壱を作り出すことであり、破壊とは壱から零を作り出すことである。破壊を行った者に創造の権限が渡り、創造者の資格を得る。そして創造者とは支配者だ。
 幸いにもこのセカイには、所有者は居れど明確な権力者は居ないらしい。私はセカイの一部を破壊し作り替えることでセカイの一部における支配者となった。私は神の称号を手に入れた。

「このセカイでは、神は、私たちだけで良い。」

 正確には、蘭は神ではないのだけれど。説明する義理はない。

 私はこのセカイに飛ばされた当初から何故か使えた最も純粋な魔力、それに加えて最も純真な力を有する。即ち私はこの体に権力を宿す。それを行使し今この瞬間にこの場所でヒエラルキーを形成した。一番は私、二番は蘭、三番はその他。それは神が定めた決定事項であり、覆ることのない世界設定。この時点で勝者と敗者は決まっている。私にはその未来が見えている。

 さあ、どうでる、ヒトよ。

「何故蘭に攻撃した?」
 私は語尾に疑問符を付けた。この質問には答えてもらおう。罪はどちらに傾くのやら。天秤は私の手の中にある。
「え?」
 リリは私に問い返した。何の権利があって? まあいいか。私は権力をリリにぶつけた。遠く離れて小さく見える白い少女が軽々しく吹き飛ぶ。お前の罪はそんなに軽くない。罰を受けて耐えてこその贖罪だ。
 お前の罪は重い。私がそう決定した。決定権は私にある。
「なんのこと? 蘭くんに攻撃なんて、してないけど」
 痛みに顔を歪めながらリリは言う。ふーん、嘘は吐いていない、か。
 嘘を言ってる顔じゃないとか、判断材料はそんなに抽象的なものではない。神たる私には真実が見える。このセカイにおける完全な神ではないので全てが見えるわけではないけれど。とにかくリリは嘘を吐いていない。
 なら慈悲を与えましょう。蘭が多少なりとも気に入った貴女だもの。猶予を与え、笑顔を見せることくらいはしてあげる。笑顔を見ると、ヒトは安心するのでしょう?
 私は笑みを浮かべ、滑るように空間を移動してリリに近づく。リリは心做しか怯えてるみたいだ。
「確かに貴女は蘭に危害を加えていないらしいね。だけど残念。貴女が蘭に危害を加えるところを見たという視覚情報が私の脳内に記載されているし、そもそも貴女の有罪は決定している。もうそれは覆らない」

 私は天に右の手の平を差し出した。

「刑罰執行」

 ぐいっと天を引き下ろす。空間そのものに打ち付けられたリリは仰け反った。打ち付けられたと言っても物理的な暴力ではないのでリリの体の一部が変形したり欠けたりすることはない。ただ身体的な損傷がないだけで精神的な損傷は計り知れないほどに加わったはずだ。

「ひなたさん!」

 ルルの悲鳴に似た叫び声が聞こえてきた。嗚呼、そういえばこいつもいたっけ。眼中になかったな。
「もうやめてください! 急にどうして?!」
 貴女は蘭が嫌っていた。それなら笑みを見せる必要なんてどこにもない。私は笑顔を表情から消去して、ルルに答えた。
「リリが蘭に攻撃をした」
「そんなことしてません!」
「そうみたいだね」
 私の言葉が理解出来ないと言いたげにルルが私を見る。理解されなくたっていい。期待なんてしていないから。

「冤罪だろうとなんだろうと、罪は罪。有罪が決定した時点で罪人には贖罪の義務が発生する。例えリリが罪を犯していないのだとしても、それを判断するのは罪人ではなく裁定者であり剪定者である私。全ての決定権は私に帰結する」

 理不尽だと喚く者は腐るほど観てきた。けれど残念。私よりも下に位置付けられるヒトは社会ではなく私の常識に従わざるを得ない。その位置を決定したのも私。神が私であるが故にヒトは四足歩行ではなく二足歩行を強制される。もしも私がヒトであったなら、彼等を哀れだと思ったことだろう。そんな未来はありえない。
 ルルは私を睨んだ。嗚呼、見飽きた顔。

「やっと心を開いてくれたと思っていましたが、気のせいだったみたいですね」
 そう言いながらスマホを持ち上げる。それ、今は使えなくなってるよ。ルルはまだ気づいていなかったのか。
 私は両の手を合わせた。パチンと良い音がして、時間が一瞬だけ止まる。

「そうだ、その魔道具使えるようにしてあげる」

 そうした方が面白そうだ。その程度の補助では、神には到底敵わないのだということを教えてあげる。

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