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253.バカセカ番外編スレ
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61 :やっきー
2022/10/23(日) 16:17:45
《日向視点》
「あ、ちょ、ちょっとまってください!」
待つもなにも一度立ち止まろうとはしていたのでその声掛けは無駄だ。そう思うがそれをルルに伝えることはしない。そんなのは面倒だ。
塔まであと少しというところで私たちは立ち止まる。見るとルルが頭を抱えていた。
「リリからメールですぅ! えっと、なになに……?」
メール。それはなに。聞いたことのない言葉。少なくとも、『私は』。興味が湧かないでもなかったが、だからと言ってルルに質問をする程ではなかったので頭の中のメールを読み込むルルをただ眺めていた。ちらっと蘭を見ると、なにを考えているのかルルを睨んでいた。
ルルの顔がどんどん強張る。と、急にその顔を上げて私を見て、蘭を見て、私を見た。なに。
そんなことが、とか、でも、とか、ルルはぶつぶつ呟く。
「おい、なんだよ?」
蘭は苛立ってしまったらしい。蘭を苛立たせたことは罪になるか、まだいいか。
「えっとですね」
ルルがわざとらしく咳払いをしたからか、心做しか蘭の額のしわが深まった気がする。
「たったいま、リリから私との遺伝子を通じて私の脳内にメールが届きました。
こんなことが出来るんですね」
最後の一言は小声だったので独り言と判断していいだろう。そんなことよりメールとやらでリリの思考がわかったということは、つまりそれは私たちの世界で言う『チャット』に当たるのだろうか。
「で? だから?」
「えぇっと。リリが言うには、ひなたさんたちの偽物がいるみたいなんですよね」
「は?」
リリも真実の破片を見つけたのか。ふうん。
私はこれを神化によって発見した。神と一言で言っても色々あるが、私が今回成った神は基本世界に一人だけ。リリが私と同じ手で破片を掴んだとは考えにくい。ここは世界ではなくセカイなので可能性がないとは言いきれない。私だってセカイの『完全な神』ではないから。
「つまりあのときのひなたさん、えーと、えーと、説明が難しいですぅ」
説明する必要があるのか。そうとは思えない。そう思ったけれど蘭に焦点を合わせると少しくらいはルルの話に関心を持っているようだった。そうか、蘭は説明を必要としているのか。だったら説明しよう。
「私が神になる前、ルルとリリに会ったでしょう」
私の声を聞いた瞬間、蘭はルルから視線を外して私を見て、頷いた。
「あの二人は、偽物」
そう言い、ルルの人差し指を指す。
「このルルは怪我をしてる。さっきのルルの指は綺麗だった」
蘭はルル個人に関心があるわけではないのでさっきのルルの指を真剣に見ていたはずはない。しかし持ち前の記憶力で真新しい記憶を呼び覚まし、蘭は改めてルルの手を見た。
いまのルルは七色の装束を纏っているので怪我をした手は見えない。でもあの私の支配空間でいまのルルの手は見たはずだ。
「本当だ」
「ひなたさんたちのところにも私たちの偽物が出たんですか?」
今度は私が頷く。
「おそらく神ではないセカイの『主』の意思。主は神よりも尊い存在だから私も逆らうことは難しい」
正しくは主も神のうちの一つなのだけれど、区別して説明した方がわかりやすいだろう。
「主はこれまで何度か私たちに協力を呼びかけた。今度は引き離そうとした」
なにがしたいのかはよくわからない。セカイに私たちを呼び込んでおいて化け物を仕向けてくるし、仕向けてくる割にはその化け物はどれも強いとはいえなかった。
「「え? てことは」」
蘭とルルが同時に言った。そのことに関して私はなにも思わなかったが蘭は嫌そうな顔をした。二人は一秒視線を交わし、発言権は蘭が得たようだ。当然だ。
「日向はおれを攻撃したリリが偽物だって知ってたのか?」
私は頷いた。
蘭の表情から疑問の色が落ちて、複雑に複数の色が混ざった色が塗られた。少しの驚きと怒り、多くの諦観。
「聞かれなかったから」
「そうだな」
蘭はそれで納得したみたい。なにか言いたげな顔はしている。ルルは微量の憤りが復活したみたいだ。しかしルルはなにも言わなかった。
沈黙。数秒の沈黙。会話は終わったのか。
「ひなたさん?」
塔に向かって歩き出した私にルルが言ったので、足は止めずに言葉を返す。
「真実がわかった。だからと言ってすべきことは変わらない」
塔の扉の前に立ち、ぐっと奥に扉を押し込む。びくともしない。なので私は引いてみた。少し動いたのでさらに力を込める。不思議なもので扉は音をたてなかった。
扉が開いたということは入場の許可が降りたということ。私は塔の中に入った。中は外同様真っ白で、光源らしきものはないが私の目に白を届けるくらいの光はあった。空気は冷たくもなく暖かくもない。中身が空っぽの模型だった。
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