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253.バカセカ番外編スレ
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70 :やっきー
2022/10/27(木) 19:57:54
嬉しそうに言うルルを無視して、彼の元へ向かう。またルルに文句を言われるぞと話しかけるおれの声も聞こえたが、上手く避けて脳を掠める程度におさえた。
「なんで負けたんだ?」
彼は顔を上げた。バレたか、と呟いて笑った。その顔はブレていて、セカイから創られた彼は単なる情報に戻ろうとしていた。その前に、どうにか考えていることを聞き出したい。
「なんでわざと負けた?」
おれは再び問う。彼は今度は微笑んだ。
「お前たちの邪魔をすること。それが俺の役割だ」
彼は瞳に悲哀の色を浮かべる。
「そして、おれの願いはフィアの救いだ」
――なるほど。
「どうかあいつを救ってやってくれ。お前なら出来る」
彼は慈愛の笑みをおれに向けた。
「……うるせえよ」
偽物のくせに、偉そうに言うんじゃねえよ。
そうか、彼は昔のおれなんだ。人を愛することに挫折する前の、まだおれが人を愛していた頃の。だから自ら攻撃を受けたんだ。悪く言えば自分を犠牲に捧げた。セカイに創られた存在にしては、複製元の意思が随分と反映されるんだな。
そう思って彼と視線を交わしていると、彼の体が赤く発光していることに気づいた。覚えのない現象に戸惑っていると、彼が言う。
「そろそろ行け。花園日向はまだ戦っているが、塔から出てきたときにお前がいた方がいいだろう。
『アイツ』がいないいまは、花園日向を支えられるのはお前だけなんだから」
「わかってる」
彼の体が真っ赤に染まり、体積が急激に膨張した。おれはなんだか嫌な予感がして、背中に気持ち悪い汗が滲むのを感じた。
「ルル、逃げるぞ! 偽物が爆発する!」
「ええええっ?!」
赤い光は走るおれを追いかける。ルルと共に塔を出てしばらく走って振り向くと、塔があった場所には妖しい赤色巨星があった。そして次は急速に体積が収縮し、小さな小さな真珠のようになった。白色矮星は大爆発を起こした。
跡形にはなにも残らなかった。床すらも。
塔があった場所には、綺麗にそこだけ深淵へと続く大穴が空いていた。
「こ、今度こそ勝ちましたか?」
「そうみたいだな」
ぐるっと辺りを見回す。日向はいない。苦戦しているのか、そうではないのか。外から見る限り日向が入っていった塔はとても静かだ。
「ブイ!」
ルルが二本指を立てた手をおれに突き出してきた。なんだなんだ、その手は確か最初におれに水魔法で攻撃したときにもしてたよな。まさか水魔法の予告か? やっぱりさっき無視したこと根に持ってんのかよ心狭いな!
「蘭も知らないんですか? ビクトリーのVマークですよ! 敵に勝った時とか、嬉しい時にするジェスチャーですぅ!」
ほお、つまりお前はおれに水をぶっかけて嬉しかったと、へえ。
……まあいいか。さっきは助かったし、それくらいの要求には応えてやろう。同じことは二度とはしないが。
「これでいいのか?」
ルルの手の形を真似る。
「じょーずですぅ!」
なんだかイラッとする言い方だ。
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