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253.バカセカ番外編スレ
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74 :やっきー
2022/10/30(日) 22:30:51
《日向視点》
……。
なんで、破裂した左腕が復活しているの?
私は神に掴まれた右腕を無視して左手を見た。ある。どうして。神の力で破壊されたはずなんだ。『私を殺せる』神の力で。
なんだ、そうか、そっか。なんだ。
「アハッ、気づいちゃった?」
ワタシは楽しそうに笑った。さっきまでと同じように。これまでと同じように。これからと同じように。
私は無表情に見返した。花園日向が人間であることを物語る白眼がワタシの青眼に映し出される。私は人間だ。それは覆らない事実。だから神であると思われたワタシに殺してもらおうと思った。ワタシなら、私を殺せると思った。
「ワタシは私の完全なるコピー。私が自殺を許されない限り、ワタシも私を殺せない」
ワタシはパッと私の腕を離した。花弁が舞うように宙をヒラヒラと泳いで、言う。
「ワタシは私を殺せない。私もワタシを殺せない。そう設定して作られているからね。
ね、それでもいいでしょう? ここで一生遊びましょう。あるかもわからない救いを求めて悠久を潰すよりもきっとずっと楽しいわ」
ワタシからの提案を私は即座に否定した。
「いいえ」
つまらない。興味が無い。
「私は救われない。けれど救われたい。だから救いを求め続ける。永遠に。私は世界に戻る」
ワタシがなにかを言おうとしたので、言葉を続けた。
「それに、私はワタシを容易に殺せる」
私はそのことに気付かないふりをして目を逸らしていただけだけど、ワタシはそうではないようだったから教えてあげる。
ワタシはきょとんとした。
「なに言ってるの? ワタシと私との力は拮抗している。ワタシたちの間には勝利もなければ、敗北もない」
「それは違う」
また即座に否定した。
「容姿、性格、記憶、価値観、能力。その他の私自身の要素をいくら完璧にコピーしようと、コピー出来ないものがある。そしてそれがアナタの致命傷となる」
まだワタシは理解していない。
「ここに蘭が来たら、きっとアナタを攻撃するでしょうね。
私ではなく、アナタを」
「アッ」
こんなこともすぐに理解できないようでは、やはりアナタのことはワタシの贋作としか呼べないのでしょう。
「私を生に縛り付けている呪いの名は【神の寵愛】」
神が私を愛しているから。ただそれだけの理由で私は死を許されない。罪を許されない。四種類ある神のうちの最上位の神。本当の意味で『私たち』を生み出した唯一神。そして創造主。
主より受ける愛の質も量も、私の方が良くも悪くも優れている。だから私はアナタを殺せるし、アナタは私を殺せない。
「アナタはワタシじゃない。ただの人形。それだけ」
だから、さようなら。
私は天に手を差し出した。神が天にいるとは限らない。そもそも私たちはカミに綴られた二次元の存在。少なくともいまは私は文字だけで構成された存在なので物理的に天に手を差し出すことは不可能。嗚呼、そんなことを気にしたって仕方ないんだった。とにかく私は神に手を差し出した。
主よ。貴方は私を愛している。貴方の意に適う私の願いなら、叶えてくださるのでしょう?
私はこのセカイからさっさとお別れして、あの馬鹿馬鹿しい世界に帰りたい。
主は私に応えた。アナタではなく私に破壊の権限を付与し、私は再び空間を破壊した。私の腕は白いままだ。代償無しに私は創造魔法を実現する。
「アナタじゃあ、私の暇つぶしにもならないわ」
既にアナタの顔は見えなくなっている。私が認識する気をなくしているのね。無理もないわ。ヒトにすら満たない私の偽物。アナタとの戦闘が楽しい? 寝ぼけているのかしら。悠久の時を誰よりも長く共に過ごした『私』ほど、飽き飽きした存在はいないのに。
アナタの支配から空間を奪い取り、塔はバコォンッと大きな音をたてて、あっと言う間もなく瓦礫と化した。アナタは瓦礫に埋もれる。そんなはずはない。仮にもワタシの力を一部であっても宿すアナタがそう簡単に潰れるはずない。私はきゅるりと眼球を回した。見えない。逃げた? 逃がさない。知ってるんだから。それぞれの偽物を倒すことがセカイから出る必要条件の一つだってことは。
私は空間を掴んだ。ぐい、と引くと目の前にアナタが出現した。
「なんで……」
アナタは驚愕している。ワタシがそんな顔するわけないのに。偽物ですら、なくなったのかしら。
「お や す み な さ い」
右手の親指と中指で輪を作り、ソレの額の前で弾く。私の動作とソレの反射では私の動作の方が早かった。ソレは外形にそれらしい中身を詰めただけで脊髄が存在しないから? ま、どうでもいいけど。
ソレの頭が吹っ飛んだ。液体は入っていなかった。あらあら。ヒトですらなかったのね。
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